骨髄異形成腫瘍では誤診がまれではない

提供元:HealthDay News

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公開日:2023/09/06

 

 骨髄異形成腫瘍(MDS)は診断が困難で、誤診もしばしば生じるため、セカンドオピニオンが必要であることを示唆した研究結果が発表された。研究論文の上席著者である、米マイアミ大学シルベスター総合がんセンターのMikkael Sekeres氏は、「診断の難しさや頻繁な誤診が、患者に不適切な治療やその他の潜在的に有害な結果を招くリスクを高める」と警鐘を鳴らしている。この研究論文は、「Blood Advances」に8月8日掲載された。

 MDSは、造血幹細胞の機能異常が原因で正常な血液細胞が作られなくなる病態で、急性骨髄性白血病(AML)に進展する傾向がある。診断時の患者の年齢は、通常は60歳以上であり、生存期間は1年未満から10年程度までと幅がある。米国での新規MDS症例は年間約2万例と見積もられているが、過少報告や誤分類のために実際はそれ以上である可能性がある。

 Sekeres氏らは今回、米国立心肺血液研究所(NHLBI)の全米骨髄異形成腫瘍自然史研究(National MDS Natural History Study)への参加者のデータを用いて、地域の病院の病理医による診断と中央の血液がんと骨髄腫を専門とする病理医(以下、専門病理医)による診断とを比較した。全米骨髄異形成腫瘍自然史研究は、MDSに関するデータと生物試料のリポジトリを構築して、この疾患に関する理解を深めることを目的としたもので、MDSの疑いがある患者やMDSと診断された患者で、治療の一環として骨髄生検が予定されている人が登録されている。

 本研究では、918人(平均年齢72歳)が解析対象とされた。地域の病院で入力された診断データに基づくと、このうちの264人(29%)はMDS、15人(2%)は骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍(MDS/MPN;血液細胞の異常形成と骨髄幹細胞の過剰な増殖を併せ持つ)、62人(7%)は特発性血球減少症(ICUS)、577人(63%)はそれ以外の診断を受けており、骨髄芽球率30%未満のAMLの診断を受けた患者はいなかった。

 この診断結果は、その後の専門病理医によるレビュー後に、3分の1程度が別の診断に再分類された。すなわち、MDSは266人(29%)、MDS/MPNは45人(5%)、ICUSは49人(5%)、骨髄芽球率30%未満のAMLが15人(2%)、それ以外が543人(59%)となった。地域の病理医による誤診断の53%は病理医の診断が研究用のフォームに誤記入されたことが原因であったことから、全体での誤診率は15%、MDSでの誤診率は21%と計算された。この結果は、MDS患者を含む全国がんレジストリの正確性に疑問を投げかけるものであると研究グループは述べている。さらに、地域の病理医と専門病理医の診断が一致しなかった症例では、一致した症例と比べて治療を受けた患者の割合が低く(25%対40%)、また、不一致例の7%は不適切な治療を受けていた。

 Sekeres氏は、「これらの研究結果は、特にMDSのような希少な血液・骨髄腫瘍性疾患では、米国国立がん研究所(NCI)指定のがんセンターに所属する専門家の意見を求めることの重要性を浮き彫りにするものだ」と述べる。同氏は、地域の腫瘍医や病理医は、血液がんのようなまれながんよりも、乳がんのようなより一般的ながんの診断経験の方が豊富であることを指摘し、「地域の医師は、よりまれながんの診断の可能性を疑わせるような微妙な兆候を見逃す可能性がある」と懸念を示す。

 研究グループは、この研究結果が、MDSに関するデータベースや、NCIの監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムに大きな影響を与えるとの見方を示す。同プログラムは1970年代初期からがんの診断と転帰の傾向を監視している。Sekeres氏はさらに、「血液がんは診断が難しく、患者が正確に診断され、タイムリーに適切な治療を受けるためには、高度に熟練した病理医と連携する高度に専門化した臨床医によるセカンドオピニオンが必要だ」と主張している。

[2023年8月9日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら