爪をかむ癖や皮膚をむしる癖を直す方法とは?

爪をかんだり、皮膚をむしったり、髪を抜いたりする癖を直したいと思っている人は、そのような癖が出そうになったときに、指先や手のひら、腕を軽くこするように触れるという方法を試してみてほしい。このような「癖置き換え療法」を6週間にわたって実践した結果、試験参加者の半数以上で効果が確認されたとするランダム化比較試験の結果を、ハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター(ドイツ)のSteffen Moritz氏が、「JAMA Dermatology」に7月19日発表した。
世界中で約5%の人が、爪や髪などの自分の体の一部をむしったりかんだりする身体集中反復行動(BFRB)を有するとされている。Moritz氏らは今回、ソーシャルメディアを通じて募集したBFRBを有する268人(女性89.9%、平均年齢36.8歳)を対象にランダム化比較試験を実施し、癖置き換え療法の有効性を検証した。試験参加者の68.3%に皮膚をむしる癖、36.6%に爪をかむ癖、28.4%に髪を抜く癖、26.1%に唇や頬をかむ癖、20.1%にその他の癖があった。参加者は半数ずつ、癖置き換え療法を行う介入群と待機リスト対照群にランダムに割り付けられた。介入期間は6週間だった。最終的に、77.6%(介入群79.1%、対照群76.1%)の参加者を解析に含めた。
その結果、癖置き換え療法を週に1回以上実践した参加者のみを対象とした分析でも、全参加者を対象にした分析でも、介入群では対照群に比べて、Generic BFRB Scale-45(GBS-45)で評価したBFRBが有意に軽減したことが明らかになった。抑うつ症状や生活の質(QOL)については、介入群で多少の改善が見られたが、対照群との間で統計学的に有意な差は認められなかった。一方で、臨床全般印象度−改善度(CGI-I)による評価でBFRBがわずかにまたは大いに軽減したと報告した参加者の割合は、介入群で52.8%であったのに対して、対照群では19.6%にとどまっていた(P<0.001)。さらに、介入群では79.7%が「もう一度この方法を試すと思う」と回答し、86.2%が「同じ癖を持つ友人にこの方法を勧めたい」に賛同の意を示すなど、癖置き換え療法に対する満足度も非常に高かった。
こうした結果を受けて研究グループは、さらなる研究が必要ではあるものの、癖置き換え療法は、デカップリング(接合の分離)や習慣逆転法などの既存のBFRBに対する行動療法に加わる可能性があると述べている。デカップリングとは連動性の強い動きを分離するアプローチのことだ。例えば、爪をかむ動作に対しては、手を顔の位置にまで上げるという初動は似ているが、最終的には爪をかむ代わりに耳たぶを触るなどの別の動作に置き換える。一方、習慣逆転法では、直したい行動を、それとは両立しない別の行動に置き換える。例えば、髪を引っ張ったり、皮膚をむしったりしたい衝動に駆られたときには、拳を握りしめるなどの行動に置き換えるという具合だ。
Moritz氏によると、デカップリングを実践して効果が現れるのは3分の1から2分の1程度であり、残りの患者では変化が現れないという。今回、癖置き換え療法について検討したのも、このようなデカップリングに反応しない患者のために別の治療法を見つけることが目的だったと同氏は説明している。
米The TLC Foundation for Body-Focused Repetitive Behaviorsの理事長であるJohn Piacentini氏は、「この研究は、BFRBに対する認識を高めるものだ」と述べる。同氏は、「われわれは、BFRBの特定の症状に影響を与え、症状の重症度を軽減できる治療法を探し求めている」と述べ、「この概念実証研究はさらなる確認が必要であるが、専門家たちを勇気付ける結果を示してくれた」と喜びを表している。同氏はさらに、「最近では、相当の時間を待たなければメンタルヘルスサービスを受けられない状況が続いているが、研究が進んで、このような自助的な治療法が開発されれば、患者間の治療格差を縮めることができるはずだ」と述べている。
[2023年7月20日/HealthDayNews]Copyright (c) 2023 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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