産後うつ病、両親が同時期に発症することも

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/22

 

 出産後にうつ病を経験する女性のいることは広く知られている。しかし、子どもが生まれた後にうつ病になる可能性があるのは母親だけではない。子どもが生まれた後の数カ月間は人生の劇的な変化を伴う。この間に、父親になったばかりの男性もうつ病を発症する場合があるのだ。しかも、母親と父親が同時にうつ病を発症し、本人だけでなく生まれてきた子どもにも大きな影響が及ぶこともある。

 こうした中、英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究グループは、これまでに発表されている産後の母親と父親のうつ病に関する研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施。その結果を、「JAMA Network Open」に6月24日発表した。

 研究グループの一人で産婦人科医のKara Smythe氏は、「母親のメンタルヘルスに関しては数多くの文献が発表されているが、父親になった男性の健康状態の重要性が認識されるようになったのは、つい最近のことだ」と指摘。その上で、今回のレビューを実施した背景について、「周産期ケアの現行システムは妊産婦のパートナーを対象に含めていないため、われわれは両親という単位で調べる必要があると考えた。母親と父親のいずれのメンタルヘルスも、新生児との関係や、新生児の健康状態に影響を与える。したがって、両親のメンタルヘルスは検討すべき重要な領域である」と説明している。

 今回の研究では、研究グループが設定した基準を満たした23件の研究に参加した、2万9,286組の両親のデータが解析対象とされた。子どもの出生から3カ月~12カ月後の両親のうつ病について検討している5件の研究(9,493組の両親)のデータをメタ解析したところ、うつ病の有病率は3.18%(95%信頼区間2.3〜4.05%、P<0.001)であり、100組当たり約3組の両親が産後うつ病を経験していたことが明らかになった。また、子どもが生まれる前に1.72%(同0.96〜2.48%、P<0.001)、子どもが生まれてから12週間以内に2.37%(同1.66〜3.08%、P<0.001)の両親がうつ病を経験していることも分かった。

 これまでの研究では、気分障害の既往歴がある親は、母親か父親かにかかわらず、精神障害を発症するリスクが高いことが示されている。また、パートナーの妊娠中にうつ病を経験する父親の割合は約10%、子どもの出生後1年の間にうつ病を経験する父親の割合は約9%であったとする研究結果も報告されている。

 Smythe氏は、「先行研究から、母親が抑うつ状態にある場合、父親も抑うつになる確率が高いことが明らかにされている。周産期の父親の不安と母親の抑うつには関連があり、母親が抑うつ状態にあると父親の不安障害のリスクが3倍に高まることが示されている」と言う。

 今回の研究には関与していない専門家の一人で、米マサチューセッツ大学のKimberly Yonkers氏は、報告されたレビューが、大うつ病エピソードと診断された症例に関するものではなく、日によって変動する可能性のある苦悩の程度を評価した結果に基づいたものであることを指摘。その上で、「子どもの誕生は素晴らしい出来事だが、ストレスフリーの出来事ではないことが今回のレビューから明らかになった重要なポイントである」との見解を示している。

 一方、米センター・フォー・メンズ・エクセレンスのDaniel Singley氏は、解析に組み入れられた研究ごとに異なるうつ病評価のカットオフ値が用いられていたこと、また、男性は自身の抑うつや不安の症状について過小評価する傾向にあることが先行研究で示されていることに言及。その上で、「今回のメタ解析では、父親あるいは両親が経験する抑うつや不安の頻度が実際よりも低く見積もられている可能性がある」と指摘している。その上で、「母親のメンタルヘルス」から「両親のメンタルヘルス」へと考え方をシフトする必要性を主張している。

[2022年6月27日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら