1型糖尿病患者の血糖変動の認知機能への影響

提供元:HealthDay News

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公開日:2024/04/26

 

 血糖値の変動が1型糖尿病患者の認知機能に影響を与える可能性のあることは古くから知られていたが、新たな研究によって、血糖値の変動パターンや患者の状態によって、認知機能への影響が異なることが明らかになった。血糖値が正常よりもわずかに高い時には、認知機能が高くなる傾向も見つかった。米マクリーン病院のLaura Germine氏らの研究によるもので、詳細は「npj Digital Medicine」に3月18日掲載された。

 論文の上席著者であるGermine氏は、「われわれの研究結果は、血糖値が脳に与える影響が人によって大きく異なる可能性があることを示している。また脳の情報処理速度を最適化するには、日常生活において血糖値の変動を最小限に抑えることが重要であることが分かった。これは特に、高齢者、または糖尿病関連の何らかの問題がある人により強く当てはまる」と話している。

 研究グループによると、血糖値の極端な低下や急速な上昇が、1型糖尿病患者の認知機能を損なう可能性があることは、以前から知られていたという。しかし、それがどの程度の頻度で起きるのか、あるいは人によって影響が異なるのかは不明だった。これらの不明点を明らかにするためにGermine氏らは、連続血糖測定システムを用いて200人の1型糖尿病患者(平均年齢45.7±15.6歳、HbA1c7.5±1.3%)の血糖値を15日間にわたって5分ごとに測定。その間、スマートフォンベースの認知機能テストを1日3回行った。

 解析結果は予想通り、血糖値が非常に低いか非常に高い場合に、認知機能が低下することが確認された。ただし、機能の低下が観察されたのは情報処理速度のみであって、注意力に関しては関連が認められなかった。研究グループでは、情報処理速度は血糖値の瞬間的な変動に反応するのに対し、注意力はより長時間の変動が影響を及ぼすのではないかと考察している。

 研究グループはまた、高齢者および、細小血管合併症を有するまたは倦怠感が強いなどの健康上の問題を抱えている1型糖尿病患者は、ほかの患者に比べて血糖変動による認知機能への影響という点で、脆弱である可能性も見いだした。論文の筆頭著者である同院のZoë Hawks氏は、「われわれの研究は、糖尿病が脳にどのような影響を与えるかを理解しようとする際に、1型糖尿病患者という集団としてだけでなく、個々の患者の違いを考慮することも重要であることを示している」と話している。

 研究では驚くべき発見もあり、1型糖尿病患者では、血糖値が正常範囲よりわずかに高いときに、認知機能が最高になる傾向が認められた。「糖尿病患者は、健康と考えられる血糖値よりも高い血糖値の時に、気分が良いと報告することがあるため、これは重要な発見だった」と、論文の共著者の1人で米ワシントン州立大学のNaomi Chaytor氏は語っている。同氏は、「この現象は、脳が少し高い血糖値に慣れてしまった結果である可能性がある。よって、研究の次のステップでは、血糖値が高い時間帯を減少させ得る血糖管理を続けた後に、認知機能がピークとなる値が正常範囲にシフトするか否かを確認することだ」と付け加えている。

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