抗精神病薬は、統合失調症に対して必ずしも万能な効果を示すわけではないにもかかわらず、抗精神病薬治療抵抗性患者に対する最適な治療戦略は依然として明らかになっていない。ガイドラインでは、薬物療法、心理療法、非侵襲的脳刺激(NIBS)などいくつかの治療法が推奨されているが、どれが最も効果的かは不明であった。ドイツ・ミュンヘン工科大学の古川 由己氏らは、抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する現在のエビデンスをシステマティックにレビューし、ネットワークメタ解析を実施した。EClinicalMedicine誌2026年5月22日号の報告。
Cochrane Schizophrenia Groupレジストリ(2025年1月13日まで)およびPubMed(2026年1月8日まで)を検索し、1回以上の適切な抗精神病薬4週間投与後も症状が持続する抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者を対象としたランダム化比較試験(RCT)を抽出した。評価者は、盲検化したうえで実施した。主要アウトカムは、標準化平均差(SMD)と95%信頼区間(CI)を用いたランダム効果ネットワークメタ解析により分析した、全般症状の変化とした。
主な結果は以下のとおり。
・59件のRCT(参加者:5,409例、平均年齢:39.8歳、男性:3,416例、女性:1,441例)が対象となり、そのうち5,013例を主要解析対象に含めた。
・抗精神病薬併用療法(18件、575例、SMD:-0.25、95%CI:-0.46~-0.04、CINeMA:非常に低い)および電気けいれん療法(5件、97例、SMD:-0.51、95%CI:-0.96~-0.06、CINeMA:非常に低い)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果的である可能性が示唆された。
・精神疾患に対する認知行動療法(CBTp)は、同じ抗精神病薬を継続するよりも効果があるという弱いエビデンスが示された(5件、340例、SMD:-0.23、95%CI:-0.58~0.11、CINeMA:非常に低い)。
・その他の戦略(キサノメリン・トロスピウム併用療法、用量漸増、経頭蓋磁気刺激療法、クロザピンまたは他の抗精神病薬への切り替え)については、結論が得られなかった。
・併用療法では、有害事象の増加がみられた(オッズ比:1.93、95%CI:1.26~3.00)。
・クロザピンおよび非クロザピンによる治療抵抗性患者の間で、サブグループ間の差は認められなかった。
著者らは「抗精神病薬治療抵抗性統合失調症患者に対する治療選択肢に関して、結果は非常に不確実であった。これらの疑問を明らかにするためには、さらなる直接比較試験が必要とされる。また、用量漸増やクロザピンへの切り替えを支持するエビデンスは認められなかった。抗精神病薬併用療法と電気けいれん療法の併用療法の有効性を示唆するエビデンスは非常に弱く、検討の余地はあるものの、十分な注意が必要である」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)