“患者・市民の医療情報アクセス向上”のためのコンソーシアム発足

提供元:ケアネット

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公開日:2026/07/06

 

 患者・市民が治療選択や医療用医薬品の適正使用に必要な情報へ適切にアクセスできる環境整備を目指すため、「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」(代表世話人:奥瀬 正紀氏、垣添 忠生氏、片木 美穂氏、武川 篤之氏)が2026年7月1日に正式に発足した。

 本コンソーシアムは、患者・市民が必要な医療情報へ適切にアクセスできる社会の実現を目的として設立されたマルチステークホルダーによる連携組織として、がんに限らずさまざまな疾患にわたって、患者団体を中心に、医療関係者、有識者、関係団体などが連携し、疾患啓発、治療選択、適正使用などに関する情報提供の在り方について議論・提言を行っていく。また、広告該当性への懸念から情報提供が過度に萎縮している現状を改善するため、疾患啓発、治療選択肢、適正使用、治験を含む臨床試験などに関する情報は、患者が自らの疾患を理解し、納得して治療を選択するための「教育・学習目的の情報」として位置付けるべきだという考え方に立つ。正確性、中立性、透明性に配慮した情報提供について、「直ちに広告に該当するものではない」という認識を社会全体で整理していくことを目指している。

 代表世話人の奥瀬 正紀氏(日本乾癬性疾患協会/YORIAILab)は、「患者・市民が医療情報に適切にアクセスできることは、納得して治療を選択するために不可欠である。本コンソーシアムでの活動を通して必要な人が必要なときに科学的に信頼できる医療情報へアクセスできる社会の実現に貢献したい」とコメント。今後はステークホルダーの声を集め、具体的な提言活動を進める方針である。

 コンソーシアムの主な活動内容は以下のとおり。

 ・患者・市民の医療情報アクセスに関する課題の整理
 ・教育・学習目的の医療情報提供の在り方に関する検討
 ・患者団体をはじめとする関係者間の対話と連携の促進
 ・社会への情報発信および提言の取りまとめ

医療用医薬品の広告規制を巡る構造的課題

 本コンソーシアム設立の契機となったのは、がん対策総合機構が2026年2月13日に公表した報告書『患者の知る権利の観点から見た医療用医薬品の情報提供と広告規制の制度・運用』である。同報告書では、日米欧の制度比較を通じて、日本の医療用医薬品情報提供における実態と構造的課題が検証された。報告書や関連する調査では、以下の実態が浮き彫りとなった。

・日本では、薬機法に基づく広告規制などの厳格な運用により、患者向け医薬品情報の提供が事実上強く制限され、教育・学習目的の情報提供であっても過度な萎縮が生じている。
・商品名を用いた情報提供が難しく、原則として一般名(成分名)での説明が求められるため、患者や家族の理解を妨げ、情報のわかりにくさや混乱につながっている。
・患者が必要とする疾患啓発や治療選択肢、治験などの情報に十分にアクセスしにくい状況が、がんや希少疾患をはじめとする多くの疾患領域に共通する社会課題となっている。

患者教育・学習目的の適切な医学情報の普及を目指して

 2026年3月13日、同報告書の報告会がオンラインで開催され、患者団体や企業など多様な立場から約60名が参加した。報告会では、処方薬において知りたい情報や伝えたい情報が十分に発信されない構造的状況、患者が理解できる仕組みの必要性について活発な意見交換が行われた。

 こうした課題認識が広がる中、2026年3月30日に厚生労働省医薬局から通知「治験等に係る情報提供の取扱いについて」が発出された。この通知では、治験などに係る情報提供について、目的や内容、導線設計などの条件を満たせば広告に該当しないことが明確化され、「情報提供=すべて広告ではない」という考え方が具体的に示された。がん対策総合機構などは、この通知を重要な前進と受け止める一方、この考え方は治験情報のみならず、教育・学習目的の一般的な医療情報提供にも適用されるべきであると判断。特定の疾患領域に限らず、患者団体、学会、医療従事者、研究者、企業、行政などが立場を超えて連携し、社会全体で取り組むためのプラットフォームが必要であるとして、コンソーシアムの設立に向けた検討が本格化した。

 その後、2026年6月16日には「患者・市民の医療情報アクセス向上コンソーシアム」の立ち上げ構想と発足時の体制が公表され、さらなる議論と調整を経て、7月1日の正式発足へと至った。今後は、がんに限らずさまざまな疾患領域にわたって、患者目線に立った環境整備に向けた具体的なアクションを展開していく予定である。

<コンソーシアム発起人団体>
・有國 美恵子氏(ユーイング肉腫家族の会)
・岩瀬 哲氏(NPO法人JORTC)
・大井 賢一氏(認定NPO法人がんサポートコミュニティー)
・大沢 かおり氏(NPO法人Hope Tree)
・奥瀬 正紀氏(一般社団法人日本乾癬性疾患協会、一般社団法人YORIAILab)
・垣添 忠生氏(公益財団法人日本対がん協会)
・片木 美穂氏(卵巣がん体験者の会スマイリー)
・岸田 徹氏(NPO法人がんノート)
・後藤 悌氏(認定NPO法人キャンサーネットジャパン)
・武川 篤之氏(認定NPO法人日本アレルギー友の会)
・中島 弥生氏(認定NPO法人ミルフィーユ小児がんフロンティアーズ)
・西舘 澄人氏(NPO法人GISTERS)
・橋本 明子氏(NPO法人血液情報広場・つばさ)
(五十音順)

(ケアネット 土井 舞子)