厚生労働省の薬事審議会・医薬品第二部会は2026年4月27日に、ホスホジエステラーゼ4B(PDE4B)阻害薬ネランドミラスト(商品名:ジャスケイド)について、特発性肺線維症(IPF)および進行性肺線維症(PPF)を効能・効果として承認することを了承した。これは、主に国際共同第III相試験「FIBRONEER-IPF試験」1)および「FIBRONEER-ILD試験」2)の結果に基づくものである。第66回日本呼吸器学会学術講演会では、両試験の日本人集団の結果が報告された。西岡 安彦氏(徳島大学大学院医歯薬学研究部 呼吸器・膠原病内科学分野)が両試験の日本人集団を対象とした併合解析結果を報告し、近藤 康博氏(愛知医科大学 呼吸器・アレルギー内科)がFIBRONEER-ILD試験の日本人PPF患者サブグループ解析結果を報告した。
FIBRONEER-IPF試験は、%FVC(努力肺活量の予測値に対する実測値の割合)が45%以上で、%DLCO(一酸化炭素肺拡散能の予測値に対する実測値の割合)が25%以上のIPF患者を対象とした。FIBRONEER-ILD試験は、IPF以外の間質性肺疾患(ILD)と診断され、HRCTで10%超の線維化を認め、%FVCが45%以上、%DLCOが25%以上のPPF患者を対象とした。両試験とも、対象患者をネランドミラスト9mgを1日2回投与する群(9mg群)、ネランドミラスト18mgを1日2回投与する群(18mg群)、プラセボ群に1:1:1の割合で割り付けた。両試験の日本人集団は281例(IPF 135例、PPF 146例)で、主要評価項目は52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量、主要な副次評価項目は治験期間中におけるIPF/ILDの初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生までの期間とした。
【2試験の併合解析】
2試験の併合解析の主な結果は以下のとおり。
・日本人集団281例の男性の割合は68.3%、平均年齢68.6歳、平均体重63.5kgで、喫煙歴ありの割合は71.2%であった。ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は45.2%、ピルフェニドンによる治療を受けていた患者は4.6%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、ピルフェニドン使用者が少ない傾向にあった。
・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-158.3mL、9mg群-105.9mL、18mg群-70.5mLであった。プラセボ群との差は、9mg群52.4mL(95%信頼区間[CI]:-19.1~123.9)、18mg群87.8mL(同:18.0~157.7)であり、18mg群でFVC低下抑制効果がより大きい傾向となった。
・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、プラセボ群37.3%(31/83例)に対し、9mg群24.7%(23/93例)、18mg群17.1%(18/105例)であり、プラセボ群に対するハザード比(HR)は、それぞれ0.71(95%CI:0.41~1.23)、0.45(95%CI:0.25~0.81)であった。
・主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%CIは、以下のとおりであった。
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初回急性増悪または死亡>
9mg群:0.62(0.29~1.31)
18mg群:0.30(0.12~0.73)
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呼吸器疾患による初回入院または死亡>
9mg群:0.72(0.41~1.24)
18mg群:0.43(0.23~0.77)
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死亡>
9mg群:0.66(0.25~1.78)
18mg群:0.45(0.15~1.35)
・主な有害事象(いずれかの群で20%以上に発現)は、下痢(プラセボ群19.3%、9mg群36.6%、18mg群38.1%)、上咽頭炎(それぞれ15.7%、23.7%、23.8%)、COVID-19(それぞれ16.9%、36.6%、38.1%)であった。投与中止に至った下痢はそれぞれ0%、1.1%、3.8%にみられた。
【FIBRONEER-ILD試験】
FIBRONEER-ILD試験の日本人集団における主な結果は以下のとおり。
・日本人集団146例の男性の割合は56.2%、平均年齢67.6歳、平均体重60.3kgで、喫煙歴ありの割合は50.9%であった。UIP(通常型間質性肺炎)パターン/UIP-likeパターンを有する割合は83.6%であり、ベースライン時にニンテダニブによる治療を受けていた患者は42.5%であった。全体集団と比較して、体重が低く、喫煙歴ありが多く、UIP/UIP-likeパターンが多い傾向にあった。
・PPFの分類は、分類不能型特発性間質性肺炎(uIIP)32.2%、自己免疫性ILD 30.1%、特発性非特異性間質性肺炎が12.3%、線維性過敏性肺炎が11.6%、その他が13.7%であり、全体集団と比較して、uIIPが多く線維性過敏性肺炎が少ない傾向にあった。
・日本人集団における52週時のFVCのベースラインからの変化量(調整平均値)は、プラセボ群-179.2mL、9mg群-68.9mL、18mg群-122.3mLであった。プラセボ群との差は、9mg群110.3mL(95%CI:9.6~211.0)、18mg群56.9mL(同:-43.5~157.2)となった。
・日本人集団における主要な副次評価項目のイベント発生割合は、最終データベースロック時において、プラセボ群47.8%(22/46例)に対し、9mg群28.6%(14/49例)、18mg群27.5%(14/51例)であり、プラセボ群に対するHRは、それぞれ0.71(95%CI:0.37~1.36)、0.54(同:0.27~1.07)であった。
・最終データベースロック時において、主要な副次評価項目を構成する各イベントのプラセボ群に対するHRおよび95%は、以下のとおりであった。
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初回急性増悪または死亡>
9mg群:0.49(0.21~1.16)
18mg群:0.33(0.13~0.86)
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呼吸器疾患による初回入院または死亡>
9mg群:0.71(0.37~1.36)
18mg群:0.54(0.27~1.07)
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死亡>
9mg群:0.51(0.18~1.49)
18mg群:0.48(0.16~1.41)
これらの結果について、西岡氏は探索的な解析であり日本人の患者数が少ないという限界を指摘しつつ「FIBRONEER-IPF試験およびFIBRONEER-ILD試験の日本人集団の併合解析において、ネランドミラスト18mg 1日2回投与は、52週時のFVC低下を抑制し、主要な副次評価項目およびその構成要素の発生リスクを抑制する傾向を示した。また、今回示したすべての評価項目で、ネランドミラスト18mg 1日2回投与がより良好な有効性を示した。日本人患者におけるネランドミラストの有効性および安全性は全体集団と一貫していた」とまとめた。また、近藤氏は「ネランドミラストはFIBRONEER-ILD試験の日本人患者において、プラセボと比較して52週時のFVC低下を抑制し、試験期間中の臨床アウトカムのリスクを数値的に抑制した。これらの結果は、FIBRONEER-ILD試験の全体集団の結果と一貫していた」とまとめた。
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FIBRONEER-IPF試験の概要>
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験
・対象:%FVCが45%以上で、%DL
COが25%以上の40歳以上のIPF(12ヵ月以内のHRCTに基づく診断を受け、UIPまたはUIP-likeパターンを有する)患者1,177例
試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回 392例
試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回 392例
対照群(プラセボ群):プラセボ 393例
・評価項目
[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量
[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生
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FIBRONEER-ILD試験の概要>
・試験デザイン:国際共同第III相無作為化プラセボ対照試験
・対象:%FVCが45%以上で、%DL
COが25%以上の18歳以上のPPF(12ヵ月以内のHRCTに基づき10%以上の線維化が認められたIPF以外のILD)患者1,176例
試験群1(9mg群):ネランドミラスト9mg、1日2回 393例
試験群2(18mg群):ネランドミラスト18mg、1日2回 391例
対照群(プラセボ群):プラセボ 392例
・評価項目
[主要評価項目]52週時におけるFVCのベースラインからの絶対変化量
[主要な副次評価項目]初回急性増悪、呼吸器疾患による初回入院、死亡のいずれかの発生
(ケアネット 佐藤 亮)