MATTERHORN試験は、切除可能な胃がん/胃食道接合部がん患者を対象に、周術期のデュルバルマブ+FLOT(フルオロウラシル、ロイコボリン、オキサリプラチン、ドセタキセル)療法の有用性を検討した試験である。昨年の米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、デュルバルマブ+FLOT群がプラセボ+FLOT群と比較して無イベント生存期間(EFS)、病理学的完全奏効(pCR)、全生存期間(OS)を有意に改善したことが報告され、欧米の多くの国ではすでに標準治療となっている。第23回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2026)のPresidential Sessionで愛知県がんセンターの室 圭氏が本試験の日本人集団の結果を報告した。
・国際共同二重盲検ランダム化第III相試験
・対象:切除可能なStageII~IVA期局所進行胃がん/食道胃接合部がん 948例
・試験群:術前FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ1500mgを併用、術後FLOT(2サイクル)+デュルバルマブ、その後デュルバルマブ単剤を最大10サイクル(D+FLOT群)474例
・対照群:デュルバルマブに代えてプラセボ投与(FLOT群)474例
・評価項目:
[主要評価項目]EFS
[副次評価項目]OS、pCR、安全性など
・データカットオフ:2024年12月20日
既報の主要な結果は以下のとおり。
・D+FLOT群はFLOT群と比較して、統計学的に有意なEFSの改善を示した(ハザード比[HR]:0.71、95%信頼区間[CI]:0.58~0.86)。
・EFS中央値はD+FLOT群は未到達(95%CI:40.7~未到達)、FLOT群で32.8ヵ月(95%CI:27.9~未到達)だった。2年EFS率は、D+FLOTでFLOT群よりも高かった(67%対59%)。
・OS中央値は、両群とも未到達であった(HR:0.78、95%CI:0.63~0.96、p=0.025)。
・pCR率はD+FLOT群で19.2%、FLOT群で7.2%だった。
・Grade3/4の有害事象の発現率は両群で類似していた。
日本人集団の解析結果は以下のとおり。
・全体集団の20%がアジア人で、うち日本人は86例(D+FLOT群:40例、FLOT群:46例)だった。それぞれ38例対42例が手術を完了し、35例対39例がD+FLOT群およびFLOT群で補助療法を開始した。
・全体集団同様に、D+FLOT群はFLOT群と比較してEFSを改善(HR:0.32、95%CI:0.13~0.72)し、24ヵ月EFS率はD+FLOT群で84.1%、FLOT群で54.5%であった。EFS改善は年齢、PD-L1発現率などいずれのサブグループでも共通していた。
・pCRは、D+FLOT群で17.5%、FLOT群で6.5%であった(オッズ比:2.98、95%CI:0.71~12.43)。
・OSも、D+FLOT群がFLOT群に比べて改善した(ハザード比:0.25、95%CI:0.08~0.63)。
・Grade3/4の有害事象はD+FLOT群の85%、FLOTの84.8%で報告された。最も頻度の高いのは好中球減少症(好中球数減少含む)であり、両群で発現率は同程度であった(75.0%対73.9%)。
室氏は「日本人患者における有効性および安全性の結果は全体集団と一致していた。D+FLOT群はFLOT群と比較してEFS、pCR、OSを改善し、安全性のプロファイルは各薬剤と一致していた」とまとめた。
本発表のディスカッサントを務めた国立がん研究センター東病院の坂東 英明氏は「現在の日本の『胃癌治療ガイドライン2025年版』では、“切除可能な進行胃がん・食道胃接合部がんに対する術前補助化学療法については明確な推奨ができない”とされており、本レジメンを臨床導入するにあたってはガイドライン改訂の議論が必要になるだろう。日本国内の多くの施設ではFLOT療法に関する経験が限られているが、日本人サブグループ解析の結果はこのレジメンが十分に管理可能であり、有効性もきわめて高いことを示唆している」とした。
これを受けて室氏は「FLOTの毒性について懸念の声が多いが、予防的にG-CSF製剤を使うことで十分に管理可能だと考える。すでに食道がんで使われているDCF療法のほうが毒性の強いレジメンであり、がん診療連携拠点病院であればFLOTは問題なく投与・管理できるはずだ。胃がん術前療法は各国で異なるレジメンが使われているのが問題だったが、今回の結果を基にD-FLOTに統一されていくことが望ましいと考える。私見になるが、日本人集団のEFSの成績が全体集団より良好だったのは、日本の優れた手術と適切な周術期管理が一因だと考える。日本においても胃がん周術期療法が早期に普及することを期待している」とした。
(ケアネット 杉崎 真名)