胃がん初のFGFR2b阻害薬、長期追跡では治療効果が減弱(FORTITUDE-101)/ESMO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/27

 

 FGFR2b過剰発現は、胃がんにおいて比較的高頻度にみられ、新たな薬剤標的として注目されている。bemarituzumab(BEMA)はFGFR2bを標的とする初の抗体薬であり、今年6月に開発元のプレスリリースで、胃がんに対して全生存期間(OS)を有意に延長したとの発表があり、詳細なデータが待たれていた。しかし、長期追跡ではその効果が減弱する傾向が認められたという。10月17~21日に行われた欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)Presidential Symposiumにおいて、韓国・延世大学校医科大学のSun Young Rha氏が、第III相FORTITUDE-101試験の結果を報告した。

・試験デザイン:第III相国際共同ランダム化二重盲検試験
・対象:切除不能または転移のあるFGFR2b過剰発現(IHC 2+/3+の10%以上)、未治療、非HER2陽性の胃または胃食道接合部がん(G/GEJC)患者
・試験群:BEMA (15mg/kgを2週ごと、1サイクル目の8日目に7.5mg/kg追加)+mFOLFOX6(BEMA群)、FGFR2b過剰発現159例・安全性解析275例
・対照群:プラセボ群、FGFR2b過剰発現165例・安全性解析267例
・評価項目:
[主要評価項目]FGFR2b過剰発現例におけるOS
[副次評価項目]FGFR2b過剰発現例における無増悪生存期間(PFS)、奏効率(ORR)、安全性
・データカットオフ:2024年12月9日

 主な結果は以下のとおり。

・登録547例のうち、主要解析集団はBEMA群159例、プラセボ群165例であった。2024年12月9日時点の中間解析(追跡期間中央値11.8ヵ月)では、BEMA群で有意なOSの延長が認められた(中央値17.9ヵ月vs.12.5ヵ月、ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.43~0.86、p=0.005)。PFSも有意に改善し(8.6ヵ月vs.6.7ヵ月、HR:0.71、p=0.019)、ORRも上昇傾向を示した。
・一方、2025年6月20日時点のフォローアップ解析(追跡期間中央値19.4ヵ月)では、OS中央値14.5ヵ月vs.13.2ヵ月、HR:0.82(95%CI:0.62~1.08)と有意差は失われ、治療効果の減弱が確認された。
・安全性解析では、BEMA群ではGrade3以上の治療関連有害事象が60.0%に発生し、プラセボ群の18.4%を大きく上回った。好中球減少などは両群に共通していたが、BEMA群は角膜障害などの眼毒性が特徴的で、治療継続のために眼科的モニタリングが行われた。

 研究者らは「現在、FORTITUDE-102試験(BEMA+mFOLFOX6+ニボルマブ群とmFOLFOX6+ニボルマブ群を比較)が進行中であり、BEMAの最適な適応集団や長期有効性がさらに明らかにされる見通しである」とした。

 ディスカッサントのYelena Y. Janjigian氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)は「FORTITUDE-101試験は2年OS率に有意差がなく、実臨床を変えるものではなかった。現在進行中のFORTITUDE-102試験はさらに大規模集団に対して最適化された有害事象管理を行い、対照群にPD-1阻害薬+化学療法を設定していることから、BEMAのより明確な評価が行えるだろう。FGFR2bADCや二重抗体薬の開発につなげることが将来的な戦略となるだろう」とした。

(ケアネット 杉崎 真名)

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