最低賃金上昇へは診療報酬の期中改定対応を要望/日医

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/27

 

 日本医師会(会長:松本 吉郎氏[松本皮膚科形成外科医院 理事長・院長])は、8月20日に定例記者会見を開催した。会見では、「最低賃金の上昇を受けた期中改定の必要性」と、10月に開催される「女性のがん」に関するシンポジウムの概要が説明された。

医療機関の倒産は地域医療へダメージ

 はじめに会長の松本氏が「賃上げに関する指標が軒並み高水準で上がってきている中で、医療では人員配置の制約もあり、医療職1人当たりの労働生産性を上げて、全体の員数を減らすといったような対応は難しく、人員を確保し続ける必要がある。また、診療報酬は固定価格であり、医療機関は賃上げにはとても対応できるような経営状況にはない。そのため、医師会は期中改定が必要であると要望しており、基本診療料を中心に診療報酬が引き上げられるべきと考えている。一部報道では医療機関の経営悪化が深刻化していることが広く報じられ、東京商工リサーチによれば2025年上半期の医療機関の倒産は16年ぶりの高水準となっている。このままの状況が続けば患者さんの受診がかなり制限される、あるいは入院ができなくなるといった医療が制限される状況になる」と懸念を述べた。

 続いて常任理事の城守 国斗氏(医療法人三幸会 理事長)が、具体的な課題と要望内容を説明した。

 この数年、最低賃金は4~6%前後の伸びを示しているものの、医療は公定価格で運営され、診療報酬改定は2年に1度であり、本体改定率は2022(令和4)年度改定では0.43%のプラス、2024(令和6)年度改定では0.88%のプラスとなっている。

 これでは、最低賃金や人事院勧告の高い伸び率や本年の春季労使交渉の平均賃上げ率5.26%などに対応できる状況ではない。このような状態が続くと医療職が他産業へ流出するなどの事態が懸念される。とくに最低賃金への対応は、ベースアップ評価料の引き上げではなく、「基本診療料を中心に引き上げるべきと考え、最低賃金が引き上げられる今秋から年末に向けて期中改定が必要だと考えており、国に要望していきたい」と語った。

 最後にシンポジウムのお知らせとして常任理事の黒瀬 巌氏(医療法人社団慶洋会 理事長)が、女性特有のがんは近年増加していること、20~40代の間でも発症するがんが増加傾向にあることを指摘し、「子宮頸がんや乳がんの初期ではほとんど症状がなく、見過ごされがちであり、いずれのがんも早期発見できれば完治する可能性が高い疾患」と指摘。今回のシンポジウムは、このようなことを踏まえ、「がんの早期発見・治療に結び付けるために、定期的な検診とともに、早期から医療機関への適切な受診が必要であることを啓発することが目的」と説明した。

 シンポジウムは、「知って安心! 女性のがんを正しく学ぼう!」をテーマに、10月5日(日)の14時30分(2時間)より日本医師会館 大講堂で開催予定。

(ケアネット 稲川 進)