8月10日「ハートの日」には循環器病の予防に支援を/日本心臓財団ほか

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/08

 

 日本心臓財団、日本循環器協会、日本循環器学会、日本AED財団の諸団体は共催で、8月10日の「健康ハートの日」を前に、都内で循環器病に関するシンポジウムを開催した。日本心臓財団が、循環器病予防と健康を呼びかける「健康ハートの日」の活動を開始し40周年の節目を迎え、「循環器病予防の40年:過去・現在・未来」をテーマに、循環器病予防活動を振り返り、将来の20年に向けた新たな展望を議論した。

 シンポジウムでは、名誉総裁の高円宮妃殿下が登壇、40年の取り組みをねぎらうとともに「本日のシンポジウムの内容が今後各地域で十分に活用され、循環器病予防の取り組みがされることを心より願う」と祝辞を寄せた。

 第1部では循環器病予防の過去と現在、大阪万博の自動体外式除細動器(AED)と緊急体制などが講演され、第2部のパネルディスカッションでは「次の20年の循環器予防」をテーマに活発な意見交換が行われた。

AEDの活用、AIの活用と進化する循環器病予防の今

 「健康ハートの日 40年の歩み」をテーマに和泉 徹氏(日本心臓財団 評議員)が、「健康ハートの日」の制定からこれまでの活動を振り返った。

 健康ハートの日は、心臓病に対応するために国民の予防意識を向上させることを目的に1985年に制定された。

 2003年からはAEDの啓発を開始し、特定健診も行われるようになった。また、この日を前後に全国で循環器専門医による健康相談をターミナル駅などで実施し、予防の啓発に努めている。わが国の心臓病患者の多くが傘寿者(80歳)であることから早期介入できるように循環器病対策推進基本計画の策定などの整備を目指していると説明した。

 次に「循環器予防対策の半世紀」をテーマに岡村 智教氏(日本循環器病予防学会 理事長)が、生活習慣病への疾病変遷と特定健診制度の成立と現在の運営などを講演した。

 過去に成人病と称していた疾病名を、1次予防として早期介入ができることを目的に生活習慣病に変更されたこと、老人保健法が制定され、全国民の健康診断制度が担保されて個別の健康教育や特定健診が始まったことを説明した。

 健康増進法で定められた方針が「健康日本21」で定められ、健康寿命の延伸や健康格差の縮小を目的にさまざまな取り組みが行われている。とくに循環器病分野では、高血圧の改善に減塩への取り組みや全国のコホート研究によるアウトカムの把握などにより、危険因子対策と地域の健康格差解消の取り組みが行われていると説明した。

 次に「大阪万博のAEDと緊急体制」をテーマに、石見 拓氏(日本AED財団 専務理事)が、イベントなどでのAEDの設置・使用状況などについて講演した。

 わが国には約67万台のAEDが設置され、20年間で8,000人が救命されたという。イベントでのAEDの活用は、2005年に開催された「愛・地球博」からであり、約100台のAEDが設置され、5例の心停止事例が発生、うち4例でAEDが使用され、いずれも救命された。そして、今年(2025年)開催の「大阪万博」では、AEDに最短で行けるためにスマートフォン(スマホ)を用いてAEDの設置位置が把握できる仕組み「AED GO」を構築し、運用している。

 課題としては、心停止の発生場所が「自宅」というケースも多く、「将来的にはウェアラブル機器などでの早期の循環器の異常把握とホームAEDの設置・活用などを今後考えなくてはいけない」と述べた。

 次に「AIを用いた循環器病予防 現状と未来」をテーマに、笹野 哲郎氏(日本循環器学会 代議員)が、現在進行中、また将来のAIを用いた循環器病の予防について講演した。

 とくに隠れ心房細動の患者について、その数は100万例以上と推定され、うち心臓発作時に自覚症状がない人は約40%とされ、治療を受けていないために循環器病だけでなく脳梗塞のリスクが高いと指摘した。

 現在活用されているAIでは、心電図の自動診断からの有病予測や再発予測が行われている。12誘導心電図の深層学習のために全国の施設で2,700例のデータが集められ、解析が行われているという。

 また、AIおよびリモートテクノロジーによる心房細動発見の地域医療プロジェクトを静岡市清水区で行い、362例の参加者から11例の隠れ心房細動の患者を見つけることができたと報告した。

 ただAI予測での注意点としては、AI診断はまだ途上であり、従来からのリスク評価も重要であることを指摘した。

 今後の課題としては、健診などを受けない隠れ心房細動患者をいかに発見するかであり、東京都と共同してこうした患者を見つける実証試験を、カプセルホテルなどの協力で行っていることを説明した。

 最後に今後の取り組みとして、「AIによる疾病有病予測は、結果の解釈と指導までを考慮し行うことが望ましい」と講演を終えた。

女性の循環器疾患を“Go red for women”で予防したい

 第2部では「次の20年の循環器病予防」をテーマに、磯部 光章氏(日本心臓財団 常任理事)、木田 圭亮氏(日本循環器協会 幹事)、東條 美奈子氏(日本循環器病予防学会 理事)の3人のパネリストが、今後の循環器病予防への取り組み、「ハートの日」啓発活動の将来、“Go red for women Japan”の活動について説明した。

 磯部氏は、東京都で行われている施策を中心に、医療従事者への講演・研修会の実施や調理や運動による循環器病予防事業を説明したほか、患者同士の交流会の取り組みなどを説明した。

 木田氏は、「ハートの日」の啓発活動について漫画『キャプテン翼』(作・高橋 陽一氏)に登場する三杉 淳をアンバサダーにさまざまなメディアで啓発活動を展開し、全国の薬局での血圧計測活動の実施やプロサッカーチームとの協業、スポーツ選手のインタビュー動画の公開とともに多くの企業ともコラボレーションを行っていることを紹介した。

 東條氏は、アメリカで行われている“Go red for women ”について説明を行った。アメリカでは、循環器病で亡くなる女性が多く、米国心臓協会(AHA)がこの活動を開始し、2月の最初の金曜日を“National Wear Red Day”と定め、女性の心臓病や脳卒中の予防・早期発見の啓発が行われているという。この活動をわが国でも行おうというものであり、日本の女性は更年期以降に循環器病が増加し、重症化しやすい傾向にあることを説明した。

 今後は、早期かつ定期的な診療受診の働きかけや企業との連携などを行うと、その展望を語った。

 ディスカッションでは、今後、サッカー以外のスポーツ、たとえばバスケットボールなどの競技を通じて広く啓発活動を行うことやハートの日だけでなく、年間を通じ循環器病予防の取り組みを行うこと、小児期から疾患啓発を行うことなどが議論された。

 8月10日の「ハートの日」の前後には全国で循環器病予防の啓発や予防のイベントが開催されるほか、全国の名所で赤い色のライトアップが実施される。

(ケアネット 稲川 進)

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