III期大腸がんの標準的な補助化学療法は、フッ化ピリミジンまたはオキサリプラチン併用療法である。ATOMIC試験は、StageIIIでミスマッチ修復機能欠損(dMMR)を有する患者において、補助療法として5-フルオロウラシル+レボホリナート+オキサリプラチン(mFOLFOX6)に抗PD-L1抗体アテゾリズマブを追加投与することで、患者予後を改善できるかを評価するために実施された。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)のプレナリーセッションにおいて、米国・メイヨークリニックのFrank A. Sinicrope氏が本試験の2回目の中間解析結果を発表した。
・試験:多施設共同無作為化第III相試験
・対象:術後StageIIIのdMMR大腸がん患者(化学療法、放射線療法未治療)
・試験群:mFOLFOX6とアテゾリズマブ(840mgを2週ごと)を12サイクル(6ヵ月)投与後、アテゾリズマブ単剤を13サイクル(計12ヵ月)投与(アテゾ群)355例
・対照群:mFOLFOX6を12サイクル(6ヵ月)投与(mFOLFOX6群)357例
・評価項目:
[主要評価項目]無病生存期間(DFS)
[副次評価項目]全生存期間(OS)、安全性
主な結果は以下のとおり。
・2017年9月~2023年1月、712例がランダム化され、アテゾ群またはmFOLFOX6群に1対1で割り付けられた。患者年齢の中央値は64歳、55.1%が女性だった。腫瘍の分類では、83.8%が近位部、53.9%が高リスク(T4および/またはN2)だった。治療期間中央値はアテゾ群で10.9ヵ月、mFOLFOX6群で5.4ヵ月だった。
・追跡期間中央値は37.2ヵ月で、124例のDFSイベントが観察された。3年DFS率は、アテゾ群で86.4%(95%信頼区間[CI]:81.8~89.9)、mFOLFOX6群で76.6%(95%CI:71.3~81.0)を示し、試験群で有意な改善が認められた(ハザード比:0.50、95%CI:0.35~0.72)。アテゾ群の有効性は、70歳以上および低リスク群と高リスク群を含むサブグループで一貫していた。
・追跡期間中央値42.5ヵ月におけるOSは未成熟だった。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、アテゾ群の72.3%、mFOLFOX6群の59.2%で発現した。Grade3/4で多くみられたのは好中球数減少(43%と30%)末梢神経障害(19%と15%)だった。
Sinicrope氏は「アテゾリズマブをmFOLFOX6に追加することは、dMMRのStageIII大腸がん患者におけるDFSを有意に改善した。このレジメンを新たな補助療法の標準治療として検討すべきだ」とした。
現地で聴講した相澤病院・がん集学治療センターの中村 将人氏は「3年DFS率が有意差をもって改善し、プラクティスチェンジとなる発表だった。一方、実臨床に用いる際には、アテゾリズマブとの併用は広く使われるCAPOXレジメンではダメなのか、MMR/MSI検査を行うタイミングなどの点が議論になりそうだ」とコメントした。
(ケアネット 杉崎 真名)