切除不能局所進行膵腺がん(LA-PAC)患者において、腫瘍電場治療(TTフィールド)と化学療法の併用が全生存期間(OS)の改善を示した。
LA-PAC患者を対象にTTフィールドとゲムシタビン+nabパクリタキセル(GnP)の有用性を評価する第III相PANOVA-3試験の結果が、米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、米国・Virginia Mason Medical CenterのVincent Picozzi氏から発表された。
LA-PACは5年生存率8%と予後不良であり、現在の治療法ではアンメットニーズが高い。LA-PACの30〜35%は局所進行だが根治切除対象は10〜15%にとどまり、残りの患者は治癒不能で消耗性の痛みを訴える。TTフィールドはさまざまな機序で腫瘍細胞の分裂を阻害する電場療法。化学療法、放射線、免疫チェックポイント阻害薬(ICI)、PARP阻害薬などとの併用により、一部の固形がんで抗腫瘍効果を高めることが認められていた。米国と欧州では膠芽腫、悪性胸膜中皮腫、非小細胞肺がんに承認されている(日本では膠芽腫のみ)。膵腺がんでは、進行ステージにおいてGnPレジメンとの併用で、有効性と忍容性が示されている。
試験デザイン:無作為化非盲検第III相試験
対象:局所進行膵腺がん
試験群:TTフィールド+GnPレジメン(TTFields+GnP群)285例
対照群:GnPレジメン(GnP群)286例
評価項目
[主要評価項目]OS
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、無痛生存期間、奏効率(ORR)、安全性など
主な結果は以下のとおり。
・OS中央値は、TTFields+GnP群16.2ヵ月、GnP群で14.2ヵ月と、TTFields+GnP群で有意に延長した(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.68~0.99、p=0.039)。
・PFS中央値はTTFields+GnP群10.6ヵ月、GnP群9.3ヵ月であった(HR:0.85、95%CI:0.68〜1.05、p=0.137)。
・無痛生存期間中央値はTTFields+GnP群15.2ヵ月、GnP群9.1ヵ月であった(HR:0.74、95%CI:0.56〜0.97、p=0.027)。
・有害事象(AE)はTTFields+GnP群の97.8%、GnP群の89.9%に発現し、重篤なAE発現は、TTFields+GnP群53.6%、GnP群47.6%であった。
・TTFields+GnP群の機器関連AEは81.0%に発現した。主なものは皮膚障害であるが、ほとんどがGrade1/2であった(Grade3は7.7%)。TTフィールドに起因する死亡例はなかった。
PANOVA-3試験は、切除不能LA-PACにおけるTTフィールドとGnPの併用療法が、OSおよび無痛生存期間において有意なベネフィットを示すことを初めて実証した。同レジメンが新たな標準治療となる可能性を示す結果となった。
この試験結果はJournal of Clinical Oncology誌2025年5月31日号に掲載された。
(ケアネット 細田 雅之)