EGFR exon20挿入変異を有する非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対し、2024年にアミバンタマブが使用可能となった。しかし、アミバンタマブで病勢進行が認められた場合や有害事象などによって中止となった場合、アミバンタマブが使用できない場合の治療選択肢は確立していない。そこで、新規EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)のzipalertinibが開発されている。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Helena Alexandra Yu氏(米国・メモリアルスローンケタリングがんセンター)が、EGFR exon20挿入変異を有する既治療のNSCLC患者を対象とした国際共同第I/II相試験「REZILIENT1試験」の第IIb相の結果を報告した。本試験において、zipalertinibはプラチナ製剤を含む化学療法±アミバンタマブによる治療歴のあるNSCLC患者においても有効であることが示唆された。本研究結果は、Journal of Clinical Oncology誌オンライン版2025年6月1日号に同時掲載された1)。
・試験デザイン:国際共同第I/II相非盲検試験
・対象:EGFR exon20挿入変異を有するNSCLC患者で、プラチナ製剤を含む化学療法±EGFR exon20挿入変異標的療法(アミバンタマブまたはmobocertinib)による治療歴のある患者
・投与方法:zipalertinib 100mg、1日2回
・第II相コホート1(化学療法既治療コホート):プラチナ製剤を含む化学療法による治療歴があり、EGFR exon20挿入変異標的療法による治療歴のない患者 143例
・第II相コホート2(化学療法+標的療法既治療コホート):プラチナ製剤を含む化学療法およびEGFR exon20挿入変異標的療法による治療歴のある患者 101例
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)による奏効率(ORR)および奏効期間(DOR)
[副次評価項目]無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性など
・解析計画:有効性の解析は、zipalertinib 100mgを少なくとも1回以上投与され、8ヵ月以上の追跡期間を有する患者を対象とした。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の年齢中央値は65歳(化学療法既治療コホート66歳、化学療法+標的療法既治療コホート62歳)、脳転移を有する割合は42%(それぞれ34%、55%)であった。
・有効性解析対象(176例)の追跡期間中央値9.3ヵ月時点におけるORRは、化学療法既治療コホート40%(全例PR)、化学療法+標的療法既治療コホート24%(CR 1例、PR 11例)であった。なお、化学療法+標的療法既治療コホートのうち、標的療法がアミバンタマブのみの集団ではORRは30%であった。
・DOR中央値は、化学療法既治療コホート8.8ヵ月、化学療法+標的療法既治療コホート8.5ヵ月であった。
・有効性解析対象のうちベースライン時に脳転移を有する集団(68例)におけるORRは31%、DOR中央値は8.3ヵ月であった。
・PFS中央値は、化学療法既治療コホート9.5ヵ月、化学療法+標的療法既治療コホート7.3ヵ月であった。12ヵ月PFS率は、それぞれ32.0%、24.8%であった。
・12ヵ月OS率は、化学療法既治療コホート73.4%、化学療法+標的療法既治療コホート59.8%であった。
・Grade3以上の治療関連有害事象(TRAE)は29.5%に発現した。治療中止に至ったTRAEは8.2%に発現した。治療関連死が2例報告され、内訳は肺臓炎、低酸素症であった。
・主なTRAE(20%以上に発現)は、爪囲炎(38.5%)、発疹(30.3%)、ざ瘡様皮膚炎(24.6%)、皮膚乾燥(24.6%)、下痢(21.7%)、口内炎(20.1%)であった。主なGrade3以上のTRAEは貧血(7.0%)、発疹(2.5%)、下痢(2.0%)であった。
本結果について、Yu氏は「プラチナ製剤を含む化学療法±アミバンタマブで病勢進行が認められたEGFR exon20挿入変異を有するNSCLC患者において、zipalertinibが有望な治療選択肢であることを支持するものである」とまとめた。なお、EGFR exon20挿入変異を有するNSCLCの1次治療におけるzipalertinibの有用性を検証する国際共同第III相試験「RELILIENT3試験」も進行中である。
(ケアネット 佐藤 亮)