EGFR-TKI既治療のNSCLC、HER3-DXdの第III相試験結果(HERTHENA-Lung02)/ASCO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/06

 

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)による治療歴を有するEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、patritumab deruxtecan(HER3-DXd)は、無増悪生存期間(PFS)を改善したものの、全生存期間(OS)を改善することはできなかった。米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)において、Tony S. K. Mok氏(中国・香港中文大学)が、国際共同第III相試験「HERTHENA-Lung02試験」の結果を報告した。すでに主要評価項目のPFSが改善したことが報告されており、OSの結果が期待されていた。

・試験デザイン:国際共同第III相無作為化比較試験
・対象:第3世代EGFR-TKIによる治療歴を有するEGFR遺伝子変異(exon19欠失変異またはL858R変異)陽性の進行NSCLC患者
・試験群(HER3-DXd群):HER3-DXd(5.6mg/kg、3週ごと) 293例
・対照群(化学療法群):プラチナ製剤を含む化学療法(シスプラチン[75mg/m2、3週ごと4サイクル]またはカルボプラチン[AUC5、3週ごと4サイクル]+ペメトレキセド[500mg/m2、3週ごと]) 293例
・評価項目:
[主要評価項目]RECIST v1.1に基づく盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS
[主要な副次評価項目]OS
[副次評価項目]頭蓋内PFS、安全性、HER3発現状況と有効性の関係など
※:クロスオーバーは許容されなかった。

 主な結果は以下のとおり。

・患者背景は両群でバランスがとれており、脳転移を有する割合はHER3-DXd群43.3%、化学療法群45.1%であった。また、第3世代EGFR-TKIを1次治療で使用した割合は、それぞれ77.1%、77.5%であった。第3世代EGFR-TKIの内訳は、オシメルチニブがそれぞれ90.8%、89.8%を占めた。
・主要評価項目のBICRによるPFS中央値は、HER3-DXd群5.8ヵ月、化学療法群5.4ヵ月であり、HER3-DXd群が有意に改善した(ハザード比[HR]:0.77、95%信頼区間[CI]:0.63~0.94、p=0.011)。9ヵ月PFS率は、それぞれ29%、19%であった。
・PFSのサブグループ解析では、おおよそ一貫した傾向がみられたが、EGFR遺伝子変異の種類によって治療効果が異なる傾向もみられた。HER3-DXd群の化学療法群に対するHRは、exon19欠失変異を有する集団では0.69であったのに対し、L858R変異を有する集団では0.94であった。
・主要な副次評価項目のOS中央値は、HER3-DXd群16.0ヵ月、化学療法群15.9ヵ月であり、両群間に有意差は認められなかった(HR:0.98、95%CI:0.79~1.22)。
・奏効率は、HER3-DXd群35.2%、化学療法群25.3%であった。
・BICRによる頭蓋内PFS中央値は、HER3-DXd群5.4ヵ月、化学療法群4.2ヵ月であった(HR:0.75、95%CI:0.53~1.06)。
・Grade3以上の治療関連有害事象は、HER3-DXd群57.9%、化学療法群46.1%に発現した。治療中断に至った有害事象は、それぞれ11.4%、9.6%に発現し、減量に至った有害事象は、それぞれ32.4%、21.1%に発現した。
・独立判定委員会により判定された治療に関連した間質性肺疾患は、HER3-DXd群の4.8%(14例)に発現した(化学療法群は0例)。

 本試験のOSの結果に基づき、第一三共は米国におけるHER3-DXdのEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに関する承認申請を取り下げたことを発表している。なお、Mok氏は「HER3発現状況などのバイオマーカーと有効性の関係に関する解析は引き続き実施する」と述べた。

(ケアネット 佐藤 亮)

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