CDK4/6阻害薬+アロマターゼ阻害薬(AI)による1次治療後に病勢進行したホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)転移乳がん患者において、経口AKT阻害薬ipatasertib+フルベストラント併用療法は、プラセボ+フルベストラントと比較して無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長した。カナダ・BC Cancer AgencyのStephen K. L. Chia氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの41施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(CCTG/BCT MA.40/FINER試験)の結果を発表した。
・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の転移乳がん患者(StageIV、CDK4/6阻害薬+AI治療歴あり、ECOG PS0/1、測定または評価可能な病変あり) 250例
・試験群:ipatasertib(28日サイクルで400mgを1~21日目に経口投与)+フルベストラント(500mgを1、14、28日目に筋注) 125例
・対照群:プラセボ+フルベストラント 125例
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団におけるRECIST 1.1による治験担当医師評価に基づくPFS
[重要な副次評価項目]全生存期間(OS)、PIK3CA/PTEN/AKT遺伝子変異陽性コホートにおけるPFS、安全性、QOLなど
・層別因子:PIK3CA/PTEN/AKT遺伝子変異(陽性vs.陰性/不明)※、endocrine resistance(primary vs.secondary)
※FoundationOne Liquid CDxを用いて判定
主な結果は以下のとおり。
・ベースラインにおける患者特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値が試験群60(29~89)歳vs.対照群59(33~83)歳、女性が98%vs.99%、ECOG PS0/1が56%/44%vs.61%/39%、de novo転移が39%vs.40%、PIK3CA/PTEN/AKT遺伝子変異陽性が46%vs.43%であった。
・追跡期間中央値15.2ヵ月時点のITT集団におけるPFS中央値は、試験群5.32ヵ月(95%信頼区間[CI]:3.58~5.62)vs.対照群1.94ヵ月(95%CI:1.84~3.22)であった(ハザード比[HR]:0.61、95%CI:0.46~0.81、p=0.0007)。
・PIK3CA/PTEN/AKT遺伝子変異陽性コホートにおけるPFS中央値は、試験群5.45ヵ月(95%CI:3.55~11.01)vs.対照群1.91ヵ月(95%CI:1.77~3.48)であった(HR:0.47、95%CI:0.31~0.72、p=0.0005)。
・OS中央値は未成熟なデータであるが、試験群23.13ヵ月(95%CI:18.6~31.08)vs.対照群24.87ヵ月(95%CI:19.91~NR)であった(HR:1.07、95%CI:0.68~1.69、p=0.75)。
・試験群で多くみられたGrade3以上の有害事象は、下痢(16.1%)、疲労(3.2%)、嘔吐、斑状丘疹状皮疹(ともに1.6%)であった。
Chia氏はこれらの結果について、「ipatasertib+フルベストラント併用療法は、CDK4/6阻害薬+AIによる1次治療後に病勢進行したHR+/HER-転移乳がん患者における治療オプションとなる可能性がある」とまとめ、現在も追跡調査および追加解析が進行中とした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)