レカネマブの有効性・安全性、アジア人の特徴は?~Clarity AD試験

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/09

 

 アルツハイマー病(AD)は高齢者における主要な健康問題の1つであり、アジア地域においては、急速な高齢化によりADの有病率が上昇すると予想されている。早期AD治療薬であるレカネマブ(商品名:レケンビ)は、複数の臨床試験において忍容性が良好であると示されているものの、アミロイド関連画像異常(ARIA)およびインフュージョンリアクション(IRR)の発現率が高いことが懸念されている1,2)。シンガポール国立大学のChristopher Chen氏らは、Clarity AD試験で無作為に割り付けられた1,795例のうち、アジア地域に居住する294例についてサブグループ解析を行った。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌2025年5月号掲載の報告。

 Clarity AD試験は、早期AD患者を対象としてレカネマブの有効性や安全性を評価した試験である。多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験(コア試験)終了後、非盲検長期継続投与試験(OLE)も実施された。対象患者は、レカネマブ10mg/kg投与群と、プラセボ群に1:1で無作為に割り付けられ、隔週で18ヵ月間投与された。

 主な結果は以下のとおり。

・アジア地域集団における人口統計学的および疾患関連のベースライン特性は、平均体重が低いこと、ADによる軽度認知障害およびCDR-GS=0.5の割合がわずかに高いことを除き、全体集団と類似していた。
・アジア地域集団におけるレカネマブの有効性は、主要評価項目、副次評価項目ともに全体集団と同様の傾向を示した。
主要評価項目:CDR-SB(調整平均差:-0.349[95%信頼区間[CI]:-0.773~-0.076]、24%の進行抑制率)
副次評価項目:アミロイドPET測定による脳内アミロイド蓄積(調整平均差:-72.2[95% CI:-84.1~-60.4])、ADAS-Cog14(調整平均差:-1.37[95%CI:-2.89~0.14])、ADCOMS(調整平均差:-0.05[95%CI:-0.10~-0.00])、ADCS-MCI-ADL(調整平均差:1.31[95%CI:-0.47~3.09])
・有害事象の全体的な発現率は、プラセボ群とレカネマブ投与群で類似していた。有害事象のほとんどは軽度~中等度であり、主に、ARIA-H(脳出血)、ARIA-E(脳浮腫)、IRRであった。
・アジア地域集団において、ARIA-E、IRR発現率はプラセボ群と比較しレカネマブ投与群で高く(ARIA-E:1.4%vs.6.2%、IRR:1.4%vs.12.3%)、全体集団と同様の傾向を示した。一方、ARIA-H発現率は、プラセボ群と比較しレカネマブ投与群で低かった(16.2%vs.14.4%)。
・レカネマブ投与群において、ARIA-H、ARIA-E、IRR発現率は全体集団と比較しアジア地域集団で低かった(ARIA-H:17.3%vs.14.4%、ARIA-E:12.6%vs.6.2%、IRR:26.4%vs.12.3%)。

 著者らは、「このアジア地域集団において、レカネマブの全体的な有効性、バイオマーカーの変化、安全性プロファイルは全体集団と一致しており、ベネフィット・リスクプロファイルは良好で、リスク管理も容易だった。アジア地域集団では、レカネマブ投与によるARIAおよびIRRの発現率は全体集団よりも低かったことが示された」と結論付けている。

(ケアネット 小原 夕奈)