肥満や過体重が、脳心血管疾患のリスクとなることは知られている。では、体重が減るとこのリスクも減らすことができるのであろうか。この課題に上海交通大学医学院および上海第9人民病院内分泌代謝研究部門のJiang Li氏らの研究グループは、中年期における長期的な体重変化と代謝状態の推移が心房細動(AF)のリスクに与える影響を研究した。その結果、AFの1次予防には、体重管理と代謝の健康維持が勧められることが示唆された。この結果は、Heart Rhythm誌2025年3月13日オンライン版に掲載された。
過体重と肥満はAFを増加させる
研究グループは、BMI変化とBMI-代謝健康状態の推移がAFに及ぼす影響を評価することを目的に、英国のUK Biobankを使用し、前向きコホート研究を実施した。メタボリックヘルスの定義は、血圧、C反応性タンパク質、トリアシルグリセロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、糖化ヘモグロビンを含む6つのメタボリックヘルシー(MH)基準のうち4つ以上を有することとした。
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時のBMI解析のために最初に組み入れた49万969人の参加者のうち、中央値14.0年の追跡期間で3万3,297件のAF症例が観察された。
・過体重(ハザード比[HR]:1.12、95%信頼区間[CI]:1.09~1.15)および肥満(HR:1.74、95%CI:1.68~1.79)は、AFリスクを有意に増加させた。
・BMIが年間2%以上低下するとAFリスクは低下し(HR:0.75、95%CI:0.57~0.99)、とくに肥満から過体重への移行ではその傾向が顕著(HR:0.74、95%CI:0.54~1.02)であったが、統計学的な有意差は認められなかった。
・MH-標準体重と比較すると、MH-肥満および代謝性不健康(MU)-肥満のHRはそれぞれ1.74(95%CI:1.67~1.81)および1.76(95%CI:1.69~1.83)だった。
・MH-過体重/肥満からMU-過体重/肥満への移行は、AFリスクを増加させた(HR:1.35、95%CI:0.97~1.88)。
研究グループは、これらの結果から「BMIの年間2%以上の低下は、とくに肥満から過体重に変化する人でAFリスクの低下と関連していた。MH-過体重/肥満からMU-過体重/肥満への移行は、AFリスクを増加させた。AFの1次予防には、体重管理と代謝の健康維持が推奨されるべき」と結論付けている。
(ケアネット 稲川 進)