1990~2021年にかけて世界のあらゆる地域と国で成人の過体重と肥満が増加しており、この傾向が続くと2050年までに世界の推定成人人口の半数超を過体重と肥満が占めると予測されることが、米国・ワシントン大学のSimon I. Hay氏ら世界疾病負担研究(Global Burden of Diseases, Injuries, and Risk Factors Study:GBD)2021 Adult BMI Collaboratorsの解析で示された。成人の過体重および肥満の増加率を抑制できた国は現在までのところない。著者は、「即時かつ効果的な介入が行われなければ、過体重と肥満は世界中で増加し続け、とくにアジアとアフリカでは人口増加により過体重と肥満が大幅に増加すると予測された。肥満は、現在および将来にわたって最も回避可能な健康リスクの1つであり、地域、国、および世界レベルで疾患の早期発症や死亡の脅威をもたらす。この危機に対処するには、より強力な対策が必要である」とまとめている。Lancet誌2025年3月8日号掲載の報告。
1990~2021年の204の国と地域の成人のデータを解析し、2050年までの傾向を推定
研究グループは、GBD 2021の確立された方法論を用い、1990~2050年の204の国と地域における25歳以上の過体重と肥満の有病率を年齢別および性別別に推定した。
過去および現在の有病率の傾向は、調査データや報告書、公開された文献を含む1,350の独自のデータソースから抽出された自己申告および実測による身体測定データに基づいた。自己申告によるバイアスを補正するために、特定の調整を適用した。
1990~2021年の過体重と肥満の推定有病率は時空間ガウス過程回帰モデルを用いて、2022~50年の予測有病率は過去の傾向が継続すると仮定した一般化アンサンブルモデリング法を用いてデータを統合し、疫学的傾向における空間的および時間的な相関を活用することで、異なる時点および地域間での結果の比較可能性を最適化した。
予測推定値は、社会人口学的指数の予測値と、年平均変化率として表される時間的相関パターンを使用して将来の動向を推定するとともに、過去の傾向が継続することを前提とした参照シナリオを考慮して生成した。
過体重と肥満は世界中で増加、とくにアジアとアフリカでは大幅に増加
1990~2021年に、過体重と肥満の割合は世界レベル、地域レベル、そしてすべての国で増加した。2021年には、推定10億人(95%不確実性区間[UI]:0.989~1.01)の成人男性と、11億1,100万人(11億~11億2,000万)の成人女性が過体重/肥満であった。
過体重/肥満の成人人口が最も多いのは中国(4億200万人[3億9,700万~4億700万])で、次いでインド(1億8,000万人[1億6,700万~1億9,400万])、米国(1億7,200万人[1億6,900万~1億7,400万])の順であった。年齢標準化過体重および肥満の有病率が最も高かったのは、オセアニア、北アフリカ、中東で、これらの国々の多くで成人の有病率が80%を超えていた。
1990年と比較すると、世界の肥満有病率は男性で155.1%(95%UI:149.8~160.3)、女性で104.9%(100.9~108.8)増加した。とくに、北アフリカおよび中東地域では、肥満の年齢補正後有病率が、男性で3倍以上、女性で2倍以上増加し、最も急激な上昇がみられた。
過去の傾向が続くと仮定すると、2050年までに過体重/肥満の成人の総数は38億人(95%UI:33億9,000万~40億4,000万)に達し、その時点での世界の成人推定人口の半数超を占めると予測された。中国、インド、米国は引き続き過体重/肥満の世界人口の大部分を占めるが、サハラ以南アフリカ地域では過体重/肥満が254.8%(95%UI:234.4~269.5)増加すると予測された。とくにナイジェリアでは、過体重/肥満の成人が2050年までに1億4,100万人(1億2,100万~1億6,200万)に増加し、過体重/肥満の人口が世界で4番目に多い国になると予測された。
(医学ライター 吉尾 幸恵)