診察室脈拍数は、心血管疾患の発症リスクや全死亡リスクと関連することが知られている。しかし、家庭脈拍数との関連は明らかになっていない。そこで、大久保 孝義氏(帝京大学医学部公衆衛生学講座 主任教授)、木村 隆大氏(帝京大学医学部附属溝口病院)らの研究グループは、高血圧を有する患者の家庭脈拍数と死亡、心血管イベントとの関連を検討した。その結果、家庭脈拍数が高いと全死亡リスクも高いことが示された。本研究結果は、Journal of the American Heart Association誌2024年12月17日号で報告された。
本研究は、日本人の家庭血圧の適正な降圧目標値を検討した無作為化比較試験「HOMED-BP試験」1)のサブ解析として実施された。対象患者は、心房細動や脳心血管疾患の既往歴のない40~79歳の高血圧(収縮期血圧135 mmHg以上または拡張期血圧85 mmHg以上)患者3,022例とした。家庭脈拍数は、降圧治療開始前5日間の測定結果の平均値をベースライン値とし、ベースライン値で5群(41.6~61.1bpm、61.2~66.1bpm、66.2~70.5bpm、70.6~76.2bpm、76.3~108.6bpm)に分類した。主要評価項目は全死亡、副次評価項目は主要心血管イベント(MACE)であった。
主な結果は以下のとおり。
・対象患者の平均年齢は59.4歳、女性の割合は50.2%(1,518/3,022例)、ベースライン時の家庭脈拍数の平均値は69.0bpmであった。
・追跡期間中央値は7.3年であった。
・ベースライン時の家庭脈拍数が高いと、全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのハザード比[HR]:1.52、95%信頼区間[CI]:1.24~1.92)。
・治療中についても同様で、治療中の家庭脈拍数が高いと全死亡リスクが高かった(bpm 1SD増加当たりのHR:1.70、95%CI:1.39~2.08)。
・全死亡リスクをベースライン時の家庭脈拍数別にみると、66.2~70.5bpm以上の3群でリスクが上昇した。各群のHRは以下のとおり。
41.4~61.1bpm:1.00(対照)
61.2~66.1bpm:1.00
66.2~70.5bpm:2.49
70.6~76.2bpm:2.21
76.3~108.6bpm:2.89
・家庭脈拍数と診察室脈拍数の両者を含めた多変量解析では、家庭脈拍数が全死亡の有意な関連因子であったが、診察室脈拍数には有意な関連がみられなかった。
・MACEと家庭脈拍数には有意な関連は認められなかった。
著者らは「家庭脈拍数が死亡リスクを予測する有用な指標であり、臨床において家庭脈拍に注意することの重要性を示した。高脈拍数と関連する改善可能な生活習慣(喫煙、座りがちな生活など)の特定や是正、指導の一助となることが期待される」とまとめた。
(ケアネット 佐藤 亮)