せん妄に対するアリピプラゾール治療〜システマティックレビュー

せん妄は、医療現場、とくに高齢者において一般的に見られる神経精神疾患である。せん妄の第1選択の薬理学的介入としてハロペリドールが挙げられるが、強力なエビデンスが存在しているわけではなく、その副作用は重篤となる可能性があり、ドパミンおよびセロトニンを標的とした代替治療薬(非定型抗精神病薬)の使用が検討される。非定型抗精神病薬の中でも、アリピプラゾールは、最も良好な安全性プロファイルを有する薬剤であると考えられる。イタリア・Mental Health Center of FrosinoneのStefano Maddalena氏らは、せん妄に対する薬理学的介入としてのアリピプラゾールに関する研究について、最新の研究を含めたシステマティックレビューを実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2024年4月30日号の報告。
2002年1月〜2023年9月の査読付きジャーナルに掲載された研究を、MedLine、PubMed、Cochrane、Embase、ScienceDirectよりシステマティックに検索した。
主な結果は以下のとおり。
・最終的に6件の研究(130例)が抽出された。
・アリピプラゾール治療を行った患者の73.8%は、7日間でせん妄の改善が認められた。
著者らは「現在入手可能な限られたデータではあるものの、せん妄に対するアリピプラゾールの効果は、少なくともハロペリドールと同等であることは間違いなく、最大のベネフィットは、忍容性および安全性プロファイルが優れている点であろう。とはいえ、本レビューの限界として、サンプルサイズが非常に小さい、認知症患者の割合が低い、多くの研究で特異性の低い尺度が使用された点が挙げられる。より説得力のあるデータを提供するためには、最小有効用量に関するより正確な表示とともに、さらなる研究が必要である」としている。
(鷹野 敦夫)
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