うつ病の症状とせん妄リスクとの関係~プロスペクティブコホート研究

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/27

 

 せん妄やうつ病は、加齢とともに増加する。両疾患には、アルツハイマー病、機能低下、死亡などの共通の症状や併存疾患の面で、臨床的に重複するものが多い。しかし、うつ病とせん妄の長期的な関連性は、よくわかっていない。米国・ブリガム・アンド・ウィメンズ病院のArlen Gaba氏らは、高齢入院患者を対象に、抑うつ症状負担およびその経過とせん妄リスクとの関連を評価するため、12年間のプロスペクティブ研究を実施した。Innovation in Aging誌2024年3月13日号の報告。

 2006〜10年、英国バイオバンク参加者31万9,141人(平均年齢:58±8歳、範囲:37〜74、女性の割合:54%)を対象に、初回評価来院前2週間に4つの抑うつ症状(気分、無関心、緊張、無気力)の頻度(0~3)を報告し、抑うつ症状負荷スコア(0〜12)を集計した。新規発症のせん妄は、フォローアップ期間中(中央値:12年)の入院記録より抽出した。4万451人(平均年齢:57±8歳、範囲:40〜74)は、初回来院から平均8年後に再評価を行った。抑うつ症状負荷および経過とせん妄予測の関連を評価するため、Cox比例ハザードモデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・フォローアップ期間中の新規せん妄発症患者数は、5,753人(1,000人当たり15人)であった。
・抑うつ症状によりせん妄リスクの増加が認められたが、完全に調整されたモデルでは関連が認められなかった。
【軽度(スコア:1〜2)】HR=1.16(95%信頼区間[CI]:1.08〜1.25、p<0.001)
【中等度(スコア:3〜5)】HR=1.30(95%CI:1.19〜1.43、p<0.001)
【重度(スコア:5以上)】HR=1.38(95%CI:1.24〜1.55、p<0.001)
・これらの所見は、入院回数とは無関係であり、状況(外科的治療、内科的治療、救急治療)や専門分野(精神神経科、心臓呼吸器、その他)を問わず一貫していた。
・抑うつ症状の悪化(1ポイント以上の増加)は、変化/スコア改善なしと比較し、せん妄リスクの39%増加(1.39[1.03〜1.88]、p=0.03)と関連しており、これはベースライン時の抑うつ症状負荷とは無関係であった。
・この関連性は、ベースライン時65歳以上の高齢者で最も強かった(p for interaction<0.001)。

 著者らは、「抑うつ症状の負荷および経過の悪化は、入院中のせん妄リスクの予測因子であることが示唆された。抑うつ症状に対する潜在的な認識が高まることで、せん妄予防に役立つ可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)