HER2+乳がん脳転移例、T-DXdで高い頭蓋内奏効率とCNS-PFS改善(DESTINY-Breast01、02、03プール解析)/ESMO2023

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/11/06

 

 トラスツズマブ デルクステカン(T-DXd)のDESTINY-Breast01、02、03試験において、ベースライン時に脳転移のあったHER2陽性乳がん患者の探索的プール解析の結果、既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性の脳転移患者で高い頭蓋内奏効率(ORR)が示された。また、中枢神経系無増悪生存期間(CNS-PFS)は、とくに未治療で活動性の脳転移患者において顕著な改善がみられた。米国・Fred Hutchinson Cancer Center, University of WashingtonのSara A. Hurvitz氏が、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で発表した。

・対象:DESTINY-Breast01、02試験(トラスツズマブ エムタンシンに抵抗性または不応例)およびDESTINY-Breast03試験(トラスツズマブおよびタキサン系抗がん剤による既治療例)で、ベースライン時に脳転移のあったHER2陽性乳がん患者
・方法:ベースライン時に既治療で安定した脳転移患者と未治療で活動性脳転移患者に分け、T-DXd群と対照薬群で比較
・評価項目:盲検下独立中央判定(BICR)による頭蓋内ORR(頭蓋内完全奏効[CR]/部分奏効[PR])、頭蓋内奏効期間(DOR)、BICRによるCNS-PFS、安全性

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン時に脳転移のあった患者はT-DXd群148例、対照薬群83例、そのうち再発乳がんがそれぞれ85例、51例だった。脳転移患者での前治療歴の中央値は3レジメン(範囲:1.0~14.0)だった。
・頭蓋内ORRは、既治療で安定した脳転移患者においてT-DXd群が45.2%(CR:17例/PR:30例)、対照薬群が27.6%(CR:2例/PR:14例)、未治療の活動性脳転移患者においてT-DXd群が45.5%(CR:7例/PR:13例)、対照薬群が12.0%(CR:0例/PR:3例)と、どちらもT-DXd群が高かった。
・頭蓋内DOR中央値は、既治療で安定した脳転移患者において、T-DXd群12.3ヵ月vs.対照薬群11.0ヵ月、未治療の活動性転移患者ではT-DXd群17.5ヵ月vs.対照薬群NAだった。
・CNS-PFS中央値は、既治療で安定した脳転移患者ではT-DXd群12.3ヵ月vs.対照薬群8.7ヵ月(ハザード比[HR]:0.5905、95%信頼区間[CI]:0.3921~0.8895)、未治療の活動性脳転移患者で18.5ヵ月vs.4.0ヵ月(HR:0.1919、95%CI:0.1060~0.3473)と、どちらもT-DXd群で延長し、とくに未治療の活動性脳転移患者で顕著だった。
・脳転移患者におけるT-DXdの安全性プロファイルは認容可能で管理可能であり、全患者集団と同等であった。

 Hurvitz氏は「T-DXdは、HER2陽性で既治療で安定した脳転移患者および未治療で活動性脳転移患者に対して有効で、許容可能で管理可能な安全性プロファイルを持つ治療オプションである」と結論した。

(ケアネット 金沢 浩子)