PSMA標的治療薬ルテチウム-177、タキサン未治療の転移を有する去勢抵抗性前立腺がんでrPFS改善(PSMAfore)/ESMO2023

タキサン未治療でアンドロゲン受容体経路阻害薬(ARPI)治療歴のある、前立腺特異的膜抗原(PSMA)陽性の転移を有する去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)患者において、ルテチウム-177[177Lu]Lu-PSMA-617は別のARPIによる治療と比較して画像上の無増悪生存期間(rPFS)を改善し、良好な安全性プロファイルを示した。米国・メイヨー・クリニックのOliver Sartor氏が第III相PSMAfore試験の結果を、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2023)で報告した。同試験については1次解析において主要評価項目(rPFS)の達成が報告されており(ハザード比[HR]:0.41、95%信頼区間[CI]:0.29~0.56、p<0.0001)、今回は2次解析結果となる。
・対象:[68Ga]Ga-PSMA-11 PET/CTによるPSMA陽性、1種類の第2世代ARPIによる治療後に進行したタキサン未治療のmCRPC患者(ECOG PS 0~1)
・試験群:[177Lu]Lu-PSMA-617(7.4GBq±10%)を6週ごと6サイクル 234例
・対照群:別のARPI(アビラテロンもしくはエンザルタミド) 234例※盲検下独立中央判定(BICR)評価によるX線所見の進行が認められた場合は試験群へのクロスオーバーが可能
・評価項目:
[主要評価項目]BICRによるrPFS
[主要副次評価項目]RPSFTクロスオーバー調整解析による全生存期間(OS)
[副次評価項目]PSA50、症候性骨関連事象(SSE)までの時間、健康関連QOL(HRQOL)、安全性など
[探索的評価項目]奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)など
主な結果は以下のとおり。
・ベースライン時の患者特性は、年齢中央値が試験群71歳vs.対照群72歳、ARPI治療歴はアビラテロンが50.9% vs.55.6%、PSA中央値18.4μg/L vs.14.9μg/Lで、その他の項目も両群でバランスがとれていた。
・対照群においてX線所見の進行により治療中止となった146例中123例(84.2%)が試験群にクロスオーバーされた。
・主要評価項目のBICRによるrPFS中央値は、試験群12.02ヵ月(95%CI:9.30~14.42)vs.対照群5.59ヵ月(95%CI:4.17~5.95)となり(HR:0.43、95%CI:0.33~0.54)、1次解析に引き続き達成された。
・主要副次評価項目のRPSFT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.55ヵ月(95%CI:14.95~NE)だった(HR:0.80、95%CI:0.48~1.33)。
・ITT解析によるOS中央値は、試験群19.25ヵ月(95%CI:16.95~NE)vs.対照群19.71ヵ月(95%CI:17.81~NE)だった(HR:1.16、95%CI:0.83~1.64)。OSのデータ解析は引き続き行われる予定。
・ORRは試験群50.7% vs.対照群14.9%、完全奏効は21.1% vs.2.7%。DOR中央値は13.63ヵ月(95%CI:11.56~NE)vs.対照群10.05ヵ月(95%CI:4.63~NE)だった。
・PSA値について、ベースラインから50%以上の低下がみられたのは、試験群57.6% vs.対照群20.4%だった。
・SSEまでの時間のHRは0.35(95%CI:0.22~0.57)、FACT-P QOL調査スコアのHRは0.59(95%CI:0.47~0.72)、BPI-SF疼痛強度スケールによる評価結果のHRは0.69(95%CI:0.56~0.85)だった。
・Grade3以上の治療下で発現した有害事象(TEAE)は試験群33.9% vs.対照群43.1%で、多くみられたのは貧血(6.2% vs.6.0%)、口内乾燥(1.3% vs.0%)などだった。
Sartor氏は、クロスオーバー調整解析によるOSは[177Lu]Lu-PSMA-617群で良好な傾向がみられたもののITT解析によるOSではみられなかったことについて、84.2%という高いクロスオーバー率が関係している可能性があるとした。
(ケアネット 遊佐 なつみ)
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