リアルワールドにおける統合失調症ケアの実際と改善ポイント

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/07

 

 統合失調症患者の臨床転帰を改善するためには、日常診療における治療パターンを理解することが重要なステップとなる。フランス・エクス=マルセイユ大学のGuillaume Fond氏らは、リアルワールドにおける抗精神病薬で治療されている統合失調症患者の長期マネジメントを明らかにするため、本研究を実施した。その結果、統合失調症患者に対するケアにおいて、今後優先すべき事項が浮き彫りとなった。とくに、50歳以上の患者に対する代謝系疾患の予防や18~34歳の患者に対する自殺予防など、特定の集団にさらに焦点を当てる必要がある。また、抗精神病薬の治療継続率は依然として低く、精神科入院率も高いままであることを報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2023年7月21日号の報告。

 2012~17年に3回以上の抗精神病薬処方を行った成人統合失調症患者を国民健康データシステムより抽出した。主要評価項目は、実際の処方パターン、患者の特徴、医療利用、併存疾患、死亡率とした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者45万6,003例のうち、経口抗精神病薬が96%、第1世代抗精神病薬の長時間作用型注射剤(LAI)が17.5%、第2世代抗精神病薬LAIが16.1%に処方されていた。
・治療開始24ヵ月後の治療継続率は、経口抗精神病薬で23.9%、第1世代抗精神病薬LAIで11.5%、第2世代抗精神病薬LAIで20.8%であった。
・治療継続期間の中央値は、経口抗精神病薬で5.0ヵ月、第1世代抗精神病薬LAIで3.3ヵ月、第2世代抗精神病薬LAIで6.1ヵ月であった。
・全体として、抗不安薬併用が62.1%、抗うつ薬併用が45.7%、抗けいれん薬併用が28.5%でみられ、これらの薬剤の併用は、女性および50歳以上の患者でより多かった。
・脂質異常症は最も頻度の高い代謝系併存疾患であったが(16.2%)、脂質モニタリングは不十分であった。
・代謝系併存疾患は、女性でより頻繁に認められた。
・標準化患者死亡率は、2013~15年の間は高いままであり(フランス一般集団の3.3~3.7倍)、平均余命は、男性で17年、女性で8年短縮されていた。
・主な死亡原因は、がん(20.2%)と心血管疾患(17.2%)であり、18~34歳の死亡の25.4%は自殺であった。

(鷹野 敦夫)