退院後の統合失調症患者における経口剤と持効性注射剤の治療継続率

提供元:ケアネット

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公開日:2023/09/01

 

 退院後の統合失調症患者におけるその後の治療継続は、患者および医療関係者、医療システムにとって問題である。これまでの報告では、第2世代抗精神病薬(SGA)の長時間作用型注射剤(LAI)は、経口非定型抗精神病薬(OAA)と比較し、治療アドヒアランスの改善や再入院リスクの軽減に有効である可能性が示唆されている。米国・Janssen Scientific AffairsのCharmi Patel氏らは、米国におけるSGA-LAIとOAAで治療を開始した統合失調症患者における、アドヒアランスと再入院リスクの比較検討を行った。その結果、統合失調症患者は、入院中に開始した抗精神病薬を退院後も継続する可能性が低かったが、SGA-LAI治療患者では、抗精神病薬の順守や外来通院を継続する可能性が高く、OAA治療患者よりも退院後ケアの継続性が向上する可能性が示唆された。Current Medical Research and Opinion誌8月号の報告。

 統合失調症関連で入院中に、新たにSGA-LAIまたはOAAによる治療を開始した成人統合失調症患者を、HealthVerityデータベースより抽出した。期間は2015~20年、インデックス日は退院日とした。対象は、入院前および入院時から退院後6ヵ月間、健康保険に継続加入しており、入院前の6ヵ月間でSGA-LAIまたはOAA以外の抗精神病薬の処方データが1件以上の患者。抗精神病薬の使用とアドヒアランス、統合失調症関連の再入院と外来通院について、退院後6ヵ月間の比較を行った。コホート間の特性は、逆確率重み付けを用いて調整した。

 主な結果は以下のとおり。

・分析対象は、SGA-LAI群は466例、OAA群は517例であった。
・入院中に開始した抗精神病薬について、退院後に薬局または医療請求があった患者は、SGA-LAI群で36.9%、OAA群で40.7%であった。そのうち、SGA-LAI群は、OAA群と比較し、抗精神病薬を順守する可能性が4.4倍高かった(20.0% vs.5.4%、p<0.001)。
・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、薬局または医療請求を行う可能性が2.3倍高く(82.7% vs.67.9%、p<0.001)、いずれかの抗精神病薬を順守する可能性が3.0倍高かった(41.5% vs.19.1%、p<0.001)。
・SGA-LAI群とOAA群の再入院率は、退院7日後で1.7% vs.4.1%、退院30日以内で13.0% vs.12.6%であった。
・SGA-LAI群は、OAA群と比較し、外来受診する可能性が51%高かった(36.3% vs.27.4%、p=0.044)。

(鷹野 敦夫)