抗精神病薬誘発性メタボリックシンドローム~ナラティブレビュー

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/27

 

 重篤な精神疾患である統合失調症は、世界の障害の主な原因トップ10の1つであり、人口の約1%に影響を及ぼす。統合失調症に対する最良の治療選択肢として、抗精神病薬治療が挙げられるが、抗精神病薬治療では脂質異常症を含むメタボリックシンドロームリスクが増加する。実際に、統合失調症患者は、一般集団と比較し、メタボリックシンドロームリスクが高いといわれている。カナダ・マニトバ大学のPelumi Samuel Akinola氏らは、抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームの有病率、メカニズムおよび対処法について、まとめて報告した。Metabolic Syndrome and Related Disorders誌オンライン版2023年6月22日号の報告。

 本研究は、ナラティブレビューとして実施した。PubMedを用いて電子データベースMedlineを検索し、抗精神病薬を使用した成人集団におけるメタボリックシンドロームの有病率および対処法を調査した研究を抽出した。

 主な結果は以下のとおり。

・抗精神病薬で治療されている患者におけるメタボリックシンドロームの有病率は、37~63%の範囲であった。
・抗精神病薬の影響には、体重増加、腹囲の増加、脂質異常症、インスリン抵抗性2型糖尿病、高血圧などが含まれた。
・メタボリックシンドローム発症を促進する薬剤として、クロザピン、オランザピンが報告されている。
・メタボリックシンドローム患者では、代謝系副作用リスクの低い抗精神病薬(ルラシドン、lumateperone、ziprasidone、アリピプラゾールなど)を優先して用いる必要がある。
・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームに対する非薬物療法として、有酸素運動、食事カウンセリングが有効であることが確認されている。
・このような患者の体重増加に対して有効性が確認された薬物療法は、ほとんどなかった。
・抗精神病薬誘発性メタボリックシンドロームは、リスクを早期に認識し、注意深くモニタリングすることが求められる。
・メタボリックシンドロームまたは関連症状に対する1次および2次予防は、抗精神病薬使用患者の死亡リスクの減少に役立つ可能性がある。

(鷹野 敦夫)