イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法で再発ALLの生存率改善

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/18

 

 mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブの併用は、再発難治性急性リンパ性白血病(ALL)患者において有効性を示し、ブリナツモマブ追加後はさらに生存率が向上したことが、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのHagop Kantarjian氏らによる研究で明らかになった。Journal of Hematology & Oncology誌2023年5月2日号の報告。

 成人ALL治療は近年、大きくその様相が変化している。B細胞上のCD19抗原を標的とする二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体ブリナツモマブやCD22を標的とした抗体薬物複合体のイノツズマブ オゾガマイシンや各種CAR-T細胞療法など、新しい治療法選択肢が登場したためである。

 再発難治性ALLに対するブリナツモマブとイノツズマブ単剤の有効性は、すでに確認されているとおりである。今回は、イノツズマブを用いた低用量のmini-Hyper-CVD療法に、ブリナツモマブを追加することで、化学療法による負担を減らすことができないかを検討した。

新しいレジメンの有効性と安全性

 Ph陰性、CD22陽性の再発難治性B細胞性ALL(B-ALL)患者を対象に試験が行われた。最初の4サイクルは低用量のmini-Hyper-CVD療法とイノツズマブが併用された。その後、ブリナツモマブを追加してさらに4サイクルの治療が行われたが、その際にイノツズマブは減量・分割投与された。

 本試験の主要評価項目は全奏効率と全生存期間(OS)であった。

 最終的に110例の患者がイノツズマブとブリナツモマブの併用療法を受け、108例(98%)の患者が前治療として化学療法を受けていた。

 主な結果は以下のとおり。

・91例(83%)が奏効を示し、完全奏効は69例(63%)であった。
・75例(82%)の患者で測定可能残存病変が陰性であった。
・追跡期間中央値48ヵ月、推定3年OS率は40%(95%信頼区間[CI]:30~49%)であった。
・より詳細に解析した結果、mini-Hyper-CVD療法とイノツズマブ併用患者の推定3年OS率は34%(95%CI:23~45%)、ブリナツモマブ追加群の推定3年OS率は52%(95%CI:36~66%)であった。
・治療の忍容性は良好で、ほとんどの副作用はGrade1/2であった。
・早期死亡(4週間以内の死亡)は7例(6%)、CRで死亡した患者は9例で、感染症2例、心筋梗塞1例、気管支肺出血1例、肝移植片対宿主病1例、死因不明4例であった。
・ブリナツモマブ関連の有害事象により中断した例はあったが、減量して再開するなどの処置が行われ、ブリナツモマブを中止した患者はいなかった。

新しい治療選択肢として

 この結果から、抗体療法を単剤で行うのではなく、"トータル化学免疫療法レジメン"という形で、あらゆる有効な治療法の組み合わせを検討することの重要性が示された。同時に、イノツズマブ+ブリナツモマブ併用mini-Hyper-CVD療法の有効性と安全性が確認され、ブリナツモマブの追加により転帰がさらに改善する可能性が示唆された。今後、大規模な多施設共同試験を実施し、成人再発難治ALLにおける新しい標準治療として確立していくことが期待される。

(ケアネット 丸山 香)