糖尿病患者の眼科受診率は半数以下/国立国際医療研究センター研究所

提供元:ケアネット

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公開日:2023/06/09

 

 糖尿病で重大な合併症に「糖尿病性網膜症」がある。治療の進歩もあり、減少しているとはいえ、本症の予防には定期的なスクリーニングが重要であり、糖尿病を主に診療する内科医と眼科医の間の連携はうまく機能しているのだろうか。この疑問に対し、井花 庸子氏(国立国際医療研究センター研究所 糖尿病情報センター)らの研究グループは、ナショナルデータベースを用いたレトロスペクティブ横断コホート研究「わが国の糖尿病患者における糖尿病網膜症スクリーニングのための内科と眼科の受診間の患者紹介フロー」を行い、その結果を報告した。Journal of Diabetes Investigation誌5月2日オンライン掲載。

■糖尿病患者の眼科受診は半数以下
 本研究は、2016年4月~2018年3月までの日本全国保険請求データベースのデータを使用。眼科受診および眼底検査は、特定の医療処置コードを用いて定義した。2017年度に眼科を受診した患者のうち、糖尿病薬を服用している患者の眼科受診と眼底検査の割合を算出し、網膜症検診に関連する因子を特定するため修正ポアソン回帰分析を行い、都道府県別の指標も算出した。

 結果は以下のとおり。

・糖尿病治療薬を服用している患者440万8,585例(男性57.8%・女性42.2%、インスリン使用14.1%)のうち、47.4%が眼科を受診。
・眼科受診者の96.9%が眼底検査を受診。
・解析から眼底検査実施割合が高かった共通因子は、女性、高齢者、インスリン使用者、糖尿病学会認定教育施設、病床数の多い医療機関で糖尿病薬を処方されている患者だった。
・都道府県別の眼科受診率の幅は38.5~51.0%、同様に眼底検査は92.1~98.7%。

 以上の結果を受け、「医師から糖尿病薬を処方された患者のうち、眼科を受診した患者は半数以下だった。一方で、眼科受診をした患者のほとんどが眼底検査を受診していた。糖尿病患者を担当する医師や医療従事者は、担当する患者に眼科受診を勧める必要性を再認識することが必要」と井花氏らは結論付けている。

(ケアネット 稲川 進)