統合失調症患者におけるLAI抗精神病薬の導入成功パターンは

統合失調症の再発予防に長時間作用型注射剤(LAI)抗精神病薬による治療は効果的であるが、いまだ十分に利用されているとはいえない。米国・ザッカーヒルサイド病院のJohn M. Kane氏らは、米国の民間保険加入患者を含む大規模データセットを用いて、統合失調症診断後のLAI抗精神病薬治療の成功パターンを特定するため、本検討を行った。その結果、主に民間保険加入患者である本データセットでは、初期段階でのLAI抗精神病薬の使用率は非常に低かったが、正常に同薬剤が導入された患者の多くは、最初の導入で90日以上の治療を達成していた。しかし、初期段階でLAI抗精神病薬が使用された場合でも、多くの患者は過去に経口抗精神病薬治療を受けており、統合失調症の初回治療としてLAI抗精神病薬はいまだ一般的ではないことが示された。The Journal of Clinical Psychiatry誌2023年4月19日号の報告。
ICD-9またはICD-10基準で新たに統合失調症と診断された18~40歳の患者のうち、第2世代のLAI抗精神病薬の導入成功(90日以上の使用と定義)、1つ以上の第2世代の経口抗精神病薬使用のデータを、2012~19年のIBM MarketScan CommercialおよびMedicare Supplementalのデータベースより特定した。アウトカムは、記述的に測定した。
主な結果は以下のとおり。
・適格基準を満たした患者は、新規に統合失調症と診断された患者4万1,391例のうち、LAI抗精神病薬を1回以上使用した患者1,836例(4%)、1回以上の第2世代経口抗精神病薬治療後にLAI抗精神病薬の導入に成功した患者202例(1%未満)。
・診断から最初のLAI抗精神病薬開始までの期間(中央値)は289.5日(範囲:0~2,171日)、LAI抗精神病薬開始から導入成功までの期間は90.0日(同:90~1,061日)、導入成功後のLAI抗精神病薬中止までの期間は166.5日(同:91~799日)であった。
・LAI抗精神病薬開始前、2つ以上の経口抗精神病薬による治療を行っていた患者は58%であった。
・LAI抗精神病薬の導入が成功した患者の86%は、最初のLAI抗精神病薬で達成が得られていた。
(鷹野 敦夫)
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