不眠症治療薬の有効性と安全性の比較~メタ解析

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/23

 

 不眠症のマネジメントにおいては、薬理学的治療が最も一般的に用いられる。しかし、不眠症に対する薬剤クラス間および各薬剤間の相対的な有効性および安全性、そのエビデンスの確実性を比較した研究は十分ではなかった。中国・蘭州大学のBei Pan氏らは、不眠症に対する治療薬の相対的な有効性、安全性、忍容性を評価するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。その結果、非ベンゾジアゼピンは、総睡眠時間、入眠潜時、中途覚醒に対する改善効果が認められた。他の不眠症に対する薬剤クラスおよび各薬剤においても、不眠症状の改善に対するベネフィットが認められた。著者らは、不眠症治療薬の選択に当たっては、不眠症の病態および各薬剤の安全性、忍容性に基づき治療薬を選択する必要があるとしている。Drugs誌2023年5月号の報告。

 2022年1月10日までに公表された研究をPubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials、PsycINFO、ClinicalTrials.govよりシステマティックに検索した。検索対象には、不眠症成人を対象とした不眠症治療薬とプラセボまたは実薬比較対照薬を比較した研究を含めた。分析にはランダム効果を伴う頻度論的ネットワークメタ解析、確実性の評価にはGRADEシステムを用いて評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・適格基準を満たした研究は148件(患者数:4万6,412例、薬剤クラス数:8、薬剤数:36、試験数:153)であった。
・プラセボと比較し、主観的および客観的に測定された総睡眠時間の有意な改善が認められた薬剤クラスは、非ベンゾジアゼピン、抗うつ薬、オレキシン受容体拮抗薬であった。
●非ベンゾジアゼピン
【主観的】平均差(MD):25.07、95%信頼区間(CI):15.49~34.64、確実性:低
【客観的】MD:22.34、95%CI:7.64~37.05、確実性:高
●抗うつ薬
【主観的】MD:54.40、95%CI:34.96~75.83、確実性:低
【客観的】MD:35.64、95%CI:13.05~58.24、確実性:高
●オレキシン受容体拮抗薬
【主観的】MD:21.62、95%CI:0.84~42.40、確実性:高
【客観的】MD:31.81、95%CI:2.66~60.95、確実性:高
・薬剤別では、doxepin、almorexant、スボレキサント、レンボレキサントは、忍容性が良好で、有害事象リスクが低く、有効な薬剤であった。
・主観的および客観的に測定された睡眠潜時の有意な短縮が認められた薬剤クラスは、非ベンゾジアゼピン、メラトニン受容体作動薬であった。
●非ベンゾジアゼピン
【主観的】MD:-10.12、95%CI:-13.84~-6.40、確実性:中
【客観的】MD:-12.11、95%CI:-19.31~-4.90、確実性:中
●メラトニン受容体作動薬
【主観的】MD:-7.73、95%CI:-15.21~-0.26、確実性:高
【客観的】MD:-7.04、95%CI:-12.12~-1.95、確実性:中
・とくにzopicloneは、最も効果的かつ有害事象リスクが低かったが、忍容性は劣っていた。
・非ベンゾジアゼピンは、中途覚醒時間の有意な短縮をもたらす可能性が示唆された。
●非ベンゾジアゼピン
【主観的】MD:-16.67、95%CI:-21.79~-11.56、確実性:中
【客観的】MD:-13.92、95%CI:-22.71~-5.14、確実性:中

(鷹野 敦夫)