老年期気分障害は、神経変性認知症の前駆症状の可能性がある。しかし、うつ病や双極症を含む老年期気分障害の神経病理学的基盤は依然としてよくわかっていない。国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構の黒瀬 心氏らは、老年期気分障害患者におけるアルツハイマー病(AD)および非ADタウ病態の関与について調査した。Alzheimer's & Dementia誌2025年6月号の報告。
対象は、老年期気分障害患者52例および年齢、性別をマッチさせた健康対照者47例。18F-florzolotauおよび11C-Pittsburgh compound Bを用いたtau/Aβ PET検査を実施した。さらに、さまざまな神経変性疾患を含む208例の剖検例における臨床病理学的相関解析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・老年期気分障害患者は、健康対照者よりもtau PETおよびAβ PETで陽性となる可能性が高かった。
・PETの結果は、剖検結果により裏付けられ、老年期躁病またはうつ病患者は、そうでない患者よりも多様なタウオパチーを有する可能性が高かった。
著者らは「本試験におけるPETおよび剖検結果は、ADおよび非ADタウ病態が一部の神経病理学的基盤となっている可能性を示唆している」としている。
(鷹野 敦夫)