HIV・結核・マラリア対策、1ドル投資で19ドルの健康の利得可能/Lancet

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/07/18

 

 HIV、結核、マラリア対策への継続的な投資は、健康上の大きな成果と高い投資効果をもたらす可能性があり、これらを実現するには各国の支出の増加を継続し、2025年に予定されている世界エイズ・結核・マラリア対策基金(グローバルファンド)の増資を含めた幅広い外部資金の維持が不可欠であると、英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのTimothy B. Hallett氏らが、世界規模のモデリング研究の結果を報告した。持続可能な開発目標(SDGs)には、2030年までにHIV、結核、マラリアの流行を終息させることが含まれている。この目標達成まで残り5年となり、グローバルファンドが2027~29年のプログラムへの資金調達を行う予定であることから、継続的な投資によって何が達成できるかを明確にすることが求められていた。Lancet誌オンライン版2025年7月3日号掲載の報告。

グローバルファンド支援国のHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推計

 研究グループは、国連合同エイズ計画(UNAIDS)、ストップ結核パートナーシップ(Stop TB Partnership)、および世界保健機関(WHO)によって策定された世界計画に基づき、グローバルファンド支援国におけるHIV、結核、マラリア対策に必要な財源を推定した。

 今後数年間に利用可能な財源の推計では、これら3疾患に対する各国の支出が一般的な政府支出の伸びに沿って増加し、グローバルファンドが追加で180億ドルを拠出し、その他の開発援助が2020~22年の平均と実質ベースで同水準になると仮定した。

 グローバルファンド支援対象国における影響(総死亡率および罹患率への影響を含む)を定量化するため、3疾患それぞれの疫学モデルと費用モデルを用いて定量化。投資収益率(ROI)は、健康の本質的価値と、罹患および早期死亡のリスク低減による直接的な経済便益の両面を考慮して算出した。

 分析は、2023年までの入手可能な最新のデータを使用し2024年末に完了した。予測期間の中心は2027~29年。この期間の具体的な拡大計画や資金調達はまだ確保されておらず、グローバルファンド第8次増資によって調達される資金の大半が使用される期間であった。

2030年までに3疾患の死亡率削減の目標は、ほぼ達成可能

 2027~29年における3疾患に対する総資源需要は、1,406億ドル(米ドル)と推定された。このうち、79%に当たる1,113億ドルは、国内財源(697億ドル)、グローバルファンド(180億ドル)、その他の外部援助(236億ドル)から賄えると試算された。これらの利用可能な資源を最適に活用することで、2027~29年に2,300万人の命を救い、4億件の症例と新規感染を回避できる可能性がある。

 3疾患の合計死亡率の推移は、2030年のSDGs達成目標に近づくと予測された(2030年の目標と2029年末の予測との差は、正規化された総死亡率の1.5~15.5%の間)。各国の平均寿命の格差は2029年までに7%縮小し、2027~29年における入院日数は1億8,900万日、外来受診回数は5億7,200万回減少し、11億ドルの節約となることが示され、1ドルの投資に対して、最大19ドルの健康の本質的価値または3.5ドルの直接的な経済利益が得られる可能性がある。

(医学ライター 吉尾 幸恵)