心アミロイドーシスの患者・家族と専門医が考える、希少・難治性疾患患者の公平実現に社会ができることは?

ファイザーは、2023年2月28日の世界希少・難治性疾患の日に先立ち、「希少・難治性疾患の患者さんのEquity(公平)実現のために社会ができることとは?~心アミロイドーシス患者さんとご家族の歩み、専門医のお話からともに考える~」をテーマに2023年2月16日、メディアセミナーを開催した。
希少疾患は約7,000種類、世界中で約4億人の患者さんが存在し、そのうち80%は遺伝性とされている。現状の課題として、希少疾患に対する専門家や情報、治療の選択肢や患者さん向けのサポート等が不足しており、患者さんとその家族の生活の質に重大な影響が生じている。心アミロイドーシスも国の指定難病の1つであり、患者さんのEquity(公平)の実現が求められている。
セミナーの前半では、心アミロイドーシス当事者である酒井 勝利氏とご家族の酒井 秀子氏が心アミロイドーシスのこれまでの歩みについて、診断から治療、日常生活の心境を語った。後半では、遠藤 仁氏(慶應義塾大学医学部 循環器内科 専任講師)から「心アミロイドーシスの診断・治療」をテーマに希少疾患の治療や課題、今後の展望について語られた。
心アミロイドーシスとは
心アミロイドーシスは心臓の筋肉細胞の隙間にアミロイド線維が溜まり、心臓が肥大し硬くなることで心不全や不整脈を起こす疾患である。心アミロイドーシスはアミロイド線維の原因物質によってALアミロイドーシスとATTRアミロイドーシスの2種類に分類される。さらにATTRアミロイドーシスは遺伝子変異のない野生型(老人性)と変異のある変異型(遺伝性)の2種類が存在し、変異型では熊本県や長野県に地域的な集積地があり、アミロイド線維が溜まりやすい臓器が複数あることで知られている。アミロイドーシスの診断は遅れやすい
アミロイドーシスは診断がされにくい疾患であり、初発症状から確定診断までの期間が6ヵ月以内で37.3%、3年以上で10.5%といった報告も存在する1)。この要因について遠藤氏は、「疾患の認知度が低いことや診断のために組織生検が必要であること、診断しても有効な治療手段が存在しなかった背景があることが考えられる」と述べた。心アミロイドーシスにおけるepoch making
近年、心アミロイドーシスの診断で画像診断が有用であること、新たな治療方法が創出されたことでepoch makingな変化があった。診断において、従来は侵襲性の高い心筋生検が必要だったが、99mTcピロリン酸シンチグラフィが登場しATTR心アミロイドーシスの診断が可能となった2)。また、臨床検査として使用することで、拡張不全で左室肥大のある60歳以上の患者さんのうち13%がATTRアミロイドーシスだった報告もあり3)、さまざまな心疾患に紛れている可能性もわかってきた。一方、治療では心不全治療だけでなく、アミロイド線維に対する疾患修飾療法として治療薬が開発・使用されるようになった。医療格差縮小に向けて課せられている希少疾患診療の課題
ATTR心アミロイドーシスの認知度は循環器領域を中心に高まっているが、いまだ潜在的な患者さんは多く存在しているかもしれない。こういった患者さん発掘のために、疾患啓発や地域・他科との連携が重要である。その取り組みとして、疾患啓発では診療ガイドライン・診断アルゴリズム2),4)の作成や早期診断のための日本版Red-flagの提唱5)、地域間の格差に対しては診断や検査を受けやすくするための環境整備が進んでいる。心アミロイドーシスになって苦労したこと・生活の中で大変だったこと
心アミロイドーシスの診断を受けて酒井 勝利氏は、「当時は疾患そのものの情報が不足していた。とくに治療に関する情報は少なく、海外の文献も診断に関する内容が大半であった。また、患者さん向けの小冊子も海外版しかなく情報収集には苦労した」と語った。ご家族の酒井 秀子氏からは「生活を送るうえで塩分制限などの食事管理が大変であった。減塩生活が続くことで気が緩むこともあり、二人三脚で病気と向き合うことが大切である」と述べた。医療従事者・メディアができること、社会へ期待すること
心アミロイドーシスは情報が日々アップデートされており、これからも新しい情報発信を続けることが患者さんとご家族の不安解消のためにきわめて重要なことである。また、一般の方々にも関心を持っていただけるよう、心アミロイドーシスをはじめとした希少疾患が認知される環境整備を医療従事者だけでなく、メディアも一緒になって取り組むことが潜在患者さんの新たな発掘につながると期待されている。(ケアネット 高津 優人)
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