精子は帽子を脱がないと卵子と受精できない/大阪大

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/01

 

 近年、不妊治療に関心が集まっている。主に健康保険上の取り扱いや不妊治療の助成金の面がほとんどであるが、不妊そのもののメカニズムについては、あまり注目されていない。
 今回、宮田 治彦氏(大阪大学微生物病研究所 准教授)らの研究グループは、精子の受精能獲得に重要なタンパク質FER1L5の発見を発表した。Science Advances誌2023年1月25日号からの報告。

FER1L5が欠損した精子は先体反応が起こらない

【背景】
 先体は精子頭部に存在する袋状の構造で、帽子のように精子頭部を覆っている。先体反応によって先体内に含まれる酵素などが放出されることで、卵子との融合に必須の分子が露出され、精子と卵子とが受精できるようになる。
 このように先体反応は受精に必須の現象だが、その制御機構は長年不明だった。そこで研究チームは、線虫の受精に必須のタンパク質FER-1に着目し、このFER-1に似たタンパク質が哺乳類の精子機能に関与するのかどうかを調べた。

【結果】
 マウスの各組織を用いて、機能未知のFER1L4、FER1L5、FER1L6の発現を調べたところ、どの遺伝子も精巣で発現しており、精子で機能する可能性があった。そこでFER1L4、FER1L5、FER1L6が欠損したそれぞれのマウスを作製したところ、FER1L5のみが雄マウスの生殖能力に重要であることが判明した。FER1L5が欠損した精子は、形態や運動性に明らかな異常はみつからないものの、卵子と受精することができなかった。さらに解析を行ったところFER1L5欠損精子では、先体が残存したままであり、先体反応が起こらないことが明らかになった。

 同研究グループは今回の結果から「FER1L5の発見が長年不明であった先体反応の制御機構解明の突破口になると考えられる。日本を含む先進諸国では6組に1組のカップルが不妊に悩んでおり、その半数は男性に起因すると言われている。FER1L5はヒト精子にも存在しており、FER1L5の機能不全が男性不妊の原因となる可能性がある。本研究成果を男性不妊の検査・診断法の確立や治療法の開発につなげたい」と期待を寄せている。

(ケアネット 稲川 進)