日本人女性における妊娠中のペットとの暮らしと産後1年までの精神症状~JECS研究

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/27

 

 これまで、ペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連についてさまざまな集団で調査されてきたが、精神症状に対する脆弱性が高まる出産前後の女性を対象とした研究は、あまり行われていなかった。富山大学の松村 健太氏らは、出産前後の女性におけるペットとの暮らしとメンタルヘルスとの関連について、調査を行った。その結果、周産期および産後の母親のメンタルヘルスに対し犬との暮らしは予防的に働き、猫との暮らしはリスク因子になることが示唆された。Social Science & Medicine誌2022年9月号の報告。

 日本で進行中の全国的な出生コホート研究であるJECS(子どもの健康と環境に関する全国調査)に参加した母親8万814人を対象に、妊娠第2/3期におけるペットとの暮らし(なし、犬のみ、猫のみ、犬猫両方)に関する情報を収集した。メンタルヘルスの状態は、出産前後の異なる2ポイントにおいてエジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS)およびケスラー心理的苦痛尺度(K6)により評価した。ペットと暮らしていない場合を基準とし、ペットと暮らしている母親のメンタルヘルスに対する調整オッズ比(aOR)および95%信頼区間(CI)を算出するため、一般線形モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・犬との暮らしは、出産1ヵ月後、6ヵ月後の抑うつ症状リスクの低下、12ヵ月後の心理的苦痛の低下との関連が認められた。
 ●出産1ヵ月後の抑うつ症状(aOR:0.97、95%CI:0.95~0.98)
 ●出産6ヵ月後の抑うつ症状(aOR:0.98、95%CI:0.96~0.99)
 ●出産12ヵ月後の心理的苦痛(aOR:0.96、95%CI:0.92~0.999)
・猫との暮らしは、出産6ヵ月後の抑うつ症状リスクの上昇、妊娠第2/3期の心理的苦痛の増加との関連が認められた。
 ●出産6ヵ月後の抑うつ症状(aOR:1.04、95%CI:1.02~1.06)
 ●妊娠第2/3期の心理的苦痛(aOR:1.07、95%CI:1.02~1.12)
・犬猫両方と暮らしている場合は、妊娠第2/3期の心理的苦痛の増加が認められたが(aOR:1.12、95%CI:1.03~1.21)、対照群とほぼ同等であった。

(鷹野 敦夫)