認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬使用

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/25

 

 抗コリン薬は、コリン作動性を遮断することで主要な治療効果や二次的な作用を発現する薬剤である。認知症患者に対する抗コリン薬の使用は、中枢作用に対しとくに敏感である可能性が示唆されている。また、抗コリン薬は、認知症治療で主に用いられるコリンエステラーゼ阻害薬の作用にも拮抗するため、注意が必要である。英国・カーディフ大学のAnnabelle Hook氏らは、英国の急性期病院における認知症患者に対する入院前後の抗コリン薬の使用状況を調査するため、横断的多施設共同研究を実施した。その結果、コリンエステラーゼ阻害薬治療を行っている場合でも、認知症患者に抗コリン薬が使用されており、入院時よりも退院時において抗コリン薬負荷が有意に高いことが明らかとなった。BMC Geriatrics誌2022年10月6日号の報告。

 対象は、2019年に英国の急性期病院17施設を受診した認知症患者352例。すべての患者が、外科病棟、内科病棟、高齢者介護病棟のいずれかの入院患者であった。各患者の薬物療法に関する情報は、標準化されたフォームを用いて収集した。抗コリン薬負荷は、エビデンスベースのオンライン計算機により算出した。入院時および退院時の抗コリン薬使用との関連を調査するため、ウィルコクソンの順位検定を用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・入院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は37.8%、3以上の患者は5.68%であった。
・退院時、抗コリン薬負荷スコア1以上の患者は43.2%、3以上の患者は9.1%であった。
・入院時から退院時にかけてのスコアの増加は、統計学的に有意であった(p=0.001)。
・向精神薬は、退院時に使用される抗コリン薬の中で最も多かった。
・コリンエステラーゼ阻害薬使用患者の44.9%に対し、抗コリン薬が使用されていた。

(鷹野 敦夫)