新型コロナ発症抑制と治療に「エバシェルド」が特例承認/AZ

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/01

 

 アストラゼネカは8月30日付のプレスリリースで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生抑制および治療の両方を適応として、同社の長時間作用型モノクローナル抗体の併用療法である「チキサゲビマブ(遺伝子組換え)/シルガビマブ(遺伝子組換え)」(販売名:エバシェルド筋注セット、以下エバシェルド)が、厚生労働省より製造販売の特例承認を取得したことを発表した。

 新型コロナの発生抑制を適応としたエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナワクチンの接種が推奨されない人、または、血液悪性腫瘍患者など、免疫機能の低下等によりワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある人となる。また、新型コロナ患者との濃厚接触者でない人のみ投与を受けられる。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ150mgとシルガビマブ150mgの計300mgを投与する。なお、新型コロナの変異株の流行状況等に応じて、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与することもできるとしている。

 治療薬としてのエバシェルドの投与対象となるのは、成人および12歳以上かつ40kg以上の小児で、新型コロナ重症化リスク因子を有し、酸素投与を要しない患者となっている。用法および用量は、筋肉内注射により、チキサゲビマブ300mgとシルガビマブ300mgの計600mgを投与する。

 効能または効果に関連する注意として、本剤の中和活性が低い変異株に対しては有効性が期待できない可能性があるため、最新の流行株の情報を踏まえ、本剤投与の適切性を検討することとしている。処方にあたり詳細については、添付文書を参照されたい。

 今回の承認は、症候性COVID-19の曝露前予防の有効性を評価した、第III相PROVENT予防試験、外来患者を対象とした第III相TACKLE治療試験、および日本で実施された第I相臨床試験などのデータに基づいている。これらの臨床試験において、良好な忍容性が確認されている。

 PROVENT試験では、エバシェルド300mg単回筋肉内投与により、プラセボ群と比較して症候性COVID-19の発症リスクを77%(95%信頼区間[CI]:46~90、p<0.001)減少した。中央値約6ヵ月の追跡期間での追加解析では、エバシェルドはプラセボ群と比較して発症リスクを83%(95%CI:66~91)減少し、1回の投与後6ヵ月間はウイルスからの保護が持続することが示された。

 TACKLE試験では、病状発現から7日以内のCOVID-19外来患者において、エバシェルド600mg単回筋肉内投与により、29日目までのCOVID-19の重症化または全死亡(原因を問わない)の相対リスクが、プラセボ群と比較して50%(95%CI:15~71、p=0.010)有意に低減した。症状発現から3日以内にエバシェルドによる治療を受けた被験者の分析では、プラセボ群と比較してCOVID-19の重症化または全死亡のリスクが88%(95%CI:9~98)低減した。症状発現から5日以内にエバシェルドの投与を受けた被験者では、重症化または全死亡のリスクが67%(95%CI:31~84)低減したという。

 なお本剤については、COVID-19の曝露前予防を適応として、米国(緊急使用許可)やEUなどで現在使用が許可されている。

(ケアネット 古賀 公子)