日本人労働者の睡眠負債がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響

健康上の問題を抱えながら仕事や業務に携わる状態を表すプレゼンティズム(presenteeism)は、生産性の低下やメンタルヘルスの問題による欠勤のリスク指標である。北海道医療大学の高野 裕太氏らは、睡眠負債、ソーシャル・ジェットラグ(社会的時差ぼけ)、不眠症状がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響を調査した。その結果、不眠症状は、睡眠負債や社会的時差ぼけよりも、プレゼンティズムや心理的苦痛に大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった。プレゼンティズムや心理的苦痛に対し、睡眠負債もまた独立した影響を及ぼしているが、社会的時差ぼけの影響は認められなかった。BioPsychoSocial Medicine誌2022年6月3日号の報告。
研究参加者は、日本人労働者351人(男性:271人、女性:79人、その他:1人、平均年齢:49±9.49歳)。参加の適格基準は、フルタイム雇用、1日8時間・週5日勤務、夜勤なしとした。参加者は、睡眠負債、社会的時差ぼけ、不眠症状、プレゼンティズム、心理的苦痛を測定するための質問票に回答した。
主な結果は以下のとおり。
・不眠症状は、睡眠負債や社会的時差ぼけと比較し、プレゼンティズム(調整オッズ比[aOR]:5.61、95%信頼区間[CI]:2.88~10.91)や心理的苦痛(aOR:7.29、95%CI:3.06~17.35)に対する影響が最も大きかった。
・睡眠負債は、社会的時差ぼけと比較し、プレゼンティズム(aOR:1.61、95%CI:1.14~2.27)や心理的苦痛(aOR:1.68、95%CI:1.11~2.54)への影響が大きかった。
・プレゼンティズム(aOR:1.04、95%CI:0.91~1.20)や心理的苦痛(aOR:0.96、95%CI:0.76~1.22)に対する社会的時差ぼけの影響は認められなかった。
(鷹野 敦夫)
関連記事

週末のキャッチアップ睡眠とうつ病との関係
医療一般(2021/10/25)

仕事のストレスと不眠症との関係
医療一般(2020/01/27)

不眠症まとめ【クローズアップ!精神神経 7疾患】
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
[ 最新ニュース ]

早期パーキンソン病、α-シヌクレインに対するprasinezumabは効果なし/NEJM(2022/08/15)

コロナ関連死リスク、BA.1株はデルタ株より低い/BMJ(2022/08/15)

急性期脳梗塞、血栓回収術単独療法の非劣性は確認されず/Lancet(解説:中川原譲二氏)(2022/08/15)

女性の果物や野菜の摂取とうつ病リスクとの関係(2022/08/15)

幼児のいる親はコロナ重症化リスクが低い~300万人超の分析(2022/08/15)

TROP2を標的としたADC(DS-1062)の非小細胞肺がんに対する第Ib相試験の結果を世界肺がん学会(WCLC2022)で発表/第一三共(2022/08/15)

術前化学療法におけるHER2低発現乳がんの特徴(2022/08/15)

女性よりも男性の寿命が短いのはY染色体のせい?(2022/08/15)
[ あわせて読みたい ]
「診療所、知人に売るから大丈夫」、それ本当に大丈夫??【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第40回(2022/06/06)
Dr.金井のCTクイズ 初級編(2022/05/17)
診療所の売れ行きに直結する「概要書」の大切さ【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第39回(2022/05/09)
医療マンガ大賞2021「たった一時間されど一時間」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/04/18)
「急ぎ」のお宝承継をゲットできる医師は…?【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第38回(2022/04/11)
Dr.田中和豊の血液検査指南 電解質編(2022/04/10)
医療マンガ大賞2021「命のバトン」受賞者描き下ろし作品(ささき かずよ氏)(2022/03/17)
医業承継における「お宝物件」の探し方【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第37回(2022/03/14)
医療マンガ大賞2021「膵臓がんの母」受賞者描き下ろし作品(フクラアカリガエル氏)(2022/03/02)
転職では「選ぶ側」だったのに…【ひつじ・ヤギ先生と学ぶ 医業承継キソの基礎 】第36回(2022/02/28)