リキッドバイオプシーによる術後再発リスク評価(COSMOS-CRC-01)/日本臨床腫瘍学会

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2022/03/01

 

 2021年に国内で初めて、リキッドバイオプシーを用いた固形がんに対する包括的ゲノムプロファイリングが保険承認された。現在、リキッドバイオプシーを用いた血中循環腫瘍DNA(ctDNA)を解析し術後の微小残存腫瘍(MRD)を検出することで術後の再発リスクを評価するというCOSMOS試験が進行中だ。

 MRD測定は造血器腫瘍分野における予後予測に広く使われており、固形がんにおける予後予測にも使えるのではないかと検討されていた。COSMOS試験は国立がん研究センターを中心としたがん臨床研究の基盤であるSCRUM-Japanのプロジェクトの1つであり、大腸がん、胃がん、膵がん、肝臓がん、メラノーマ患者を対象としている。

 2022年2月に行われた第19回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2022)では中村 能章氏(国立がん研究センター東病院 消化管内科)が大腸がん患者を対象としたCOSMOS-CRC-01試験の中間解析結果を発表した。

[COSMOS-CRC-01試験]
・対象:切除可能なステージ0~IIIの大腸がん患者
・術前、術後28日、3ヵ月ごと術後1年、6ヵ月ごと術後2~5年間測定
・Guardant Reveal(未承認)を用いてゲノム異常とエピゲノム異常を同時解析

 主な結果は以下のとおり。

・2020年1月~2021年4月に501例が登録され、そのうちステージIIまたはIIIの根治切除を受けた93例を解析した(追跡期間中央値:15.6ヵ月)。年齢中央値70(34~88)歳、61%が男性、ステージIIとIIIがほぼ同数であった。
・術前ctDNA解析が成功した89例のうち、11例(12%)にゲノム異常、11例(12%)にエピゲノム異常、53例(60%)に両方の異常が認められ、計75例(84%)がctDNA陽性と判定された。
・術後28日時点のctDNA解析は93例全例で成功し、2例(2%)にゲノム異常、14例(15%)にエピゲノム異常、7例(8%)に両方の異常が認められ、計23例(25%)でctDNA陽性となった。
・ゲノム解析においては、APC、BRAF、CTNNB1、KRAS、PIK3CA、TP53といった大腸がんにおいて重要な遺伝子変異が認められ、これら遺伝子変異の腫瘍分画(血中に遊離しているセルフリーDNA全体におけるctDNAの割合)の最低値は0.03%、またエピゲノム異常の腫瘍分画の最低値は0.006%だった。
・今回のデータカットオフ日(2021年11月30日)時点で、93例中12例に再発が認められ、うち6例(50%)では術後28日時点でctDNAが陽性だった。また再発した12例のうち、術後2回以上の血液解析が行われた11例では、うち10例(91%)が術後いずれかの時点でctDNAが陽性だった。
・術後ctDNAが陽性となった時点から再発までの期間の平均値は6.6ヵ月だった。
・術後28日時点でのctDNA陰性例の1年無病生存期間(DFS)が93%だったのに対し、陽性例は同83%だった。

 中村氏は「今回の結果は、血液のゲノム・エピゲノム解析が、補完的に術後MRDを検出することを示した。追跡期間が短く、対象者も少ないために今回の結果は限定的であるが、組織採取を必要としないリキッド検査の利点は大きく、6ヵ月前という早い時期に再発を予測でき、リスクの高低によって術後の化学療法を変更できる可能性もある。今後のさらなる追跡によって本検査の有用性を明らかにしたい」としている。

(ケアネット 杉崎 真名)