双極性障害が日本人の健康関連QOLや労働生産性に及ぼす影響

提供元:ケアネット

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公開日:2021/11/01

 

 これまでの研究では、双極性障害患者は、対人関係、教育または就業に問題を抱えて、QOLが低下しているといわれている。順天堂大学の加藤 忠史氏らは、健康関連QOL、労働生産性およびそれらに関連するコストに対する双極性障害の影響を推定するため、検討を行った。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2021年8月1日号の報告。

 オンライン調査National Health and Wellness Surveyの2019年のデータを用いて、検討を行った。双極性障害患者179例、うつ病患者1,549例、対照群(双極性障害、うつ病、統合失調症でない人)2万7,485例について比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・双極性障害の生涯有病率は0.60%、うつ病の生涯有病率は5.16%と推定された。
・双極性障害患者では、精神的QOLサマリー(MCS)スコア、役割的QOLサマリー(RCS)スコア、EQ-5D-5Lサマリーインデックスの有意な低下が認められ、Work Productivity and Activity Impairment questionnaireで評価されたプレゼンティズム、労働生産性の問題、活動性の問題および対照群と比較した双極性障害に関連するコスト、PHQ-9スコア10以上の割合の有意な増加が認められた。
・双極性障害患者は、うつ病患者と比較し、RCSスコアが有意に低く、労働生産性の損失と活動性の問題が多かった。
・日本における双極性障害の全コストは、human-capital approachを用いて、1兆2,360億円と推定された。
・本研究の限界として、本分析で使用したデータは自己申告であり、横断的であるため、因果関係を推測することはできない。

 著者らは「双極性障害患者および重度の抑うつ症状を有する患者では、健康関連QOLの有意な低下が認められ、労働生産性の損失や関連コストが増大することが示唆された。このことは、双極性障害および双極性うつ病の適切なスクリーニングや診断および治療の重要性を表している」としている。

(鷹野 敦夫)