PTSDやBPDにおける解離性症状と自殺傾向との関係

提供元:ケアネット

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公開日:2021/10/28

 

 解離性症状と自殺傾向は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や境界性パーソナリティ障害(BPD)の診断における特徴である。カナダ・マニトバ大学のJordana L. Sommer氏らは、PTSDとBPD患者における解離性症状(離人感や現実感消失症)と自殺傾向(自傷行為や自殺企図)との関連を調査した。Journal of Traumatic Stress誌オンライン版2021年8月23日号の報告。

解離性症状のあるPTSD患者の自殺企図の推定率34.5~38.1%

 2012~13年に行われた大規模疫学調査National Epidemiologic Survey on Alcohol and Related Conditions(NESARC-III)のデータを分析した(3万6,309例)。DSM-VのAlcohol Use Disorder and Associated Disabilities Interview Scheduleを用いて、PTSD患者およびBPD患者の寿命を評価した。PTSD患者およびBPD患者の解離性症状と自傷行為および自殺企図との関連を調査するため、多重ロジスティック回帰を用いた。

 PTSD患者およびBPD患者の解離性症状と自殺傾向との関連を調査した主な結果は以下のとおり。

・解離性症状のあるPTSD患者およびBPD患者における自傷行為および自殺企図の推定率は、以下のとおりであった。
【自傷行為】
 ●PTSD患者:15.5~26.2%
 ●BPD患者:13.7~23.5%
【自殺企図】
 ●PTSD患者:34.5~38.1%
 ●BPD患者:28.3~33.1%
・とくにBPD患者において解離性症状と自殺傾向との関連が認められた(aOR:1.39~2.66)。しかしこの関連性は、PTSDまたはBPDの他の症状(気分障害、疾患重症度など)により(3番目の変数)、部分的に引き起こされている可能性も考えられる。

 著者らは「PTSD患者およびBPD患者の自殺リスクを減少させるために、個々の患者のリスク評価とターゲットを絞った介入が役立つ可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)