高齢者における抗認知症薬処方の決定因子

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/06

 

 フランスでは、コリンエステラーゼ阻害薬やメマンチンなどの抗認知症薬は、効果に議論の余地が残り2011年のガイドラインで推奨されていないにもかかわらず、依然として汎用されている。フランス・パリ・サクレー大学のMathilde Francois氏らは、抗認知症薬処方の決定因子について、評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2020年2月17日号の報告。

 本研究は、2013年に横断的研究として実施した。対象は、フランスの国民健康保険データベースより特定した65歳以上の認知症患者。年齢、併存疾患、ヘルスケアの利用との相関を予測するため、潜在クラス分析により、まずは患者の健康状態を特定した。次に、調整済みロジスティック回帰モデルを実施した。説明変数は、患者の健康状態、性別、非薬理学的治療介入(理学療法、言語聴覚療法)、向精神薬処方、ヘルスケアへのアクセスとした。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者3,873例のうち、抗認知症薬が処方されていた患者は38%であった。
・健康状態の異なる3つの潜在リスクが特定された。
・健康状態が不良な患者では、抗認知症薬の処方が有意に少なかった(p<0.001)。
・言語聴覚療法または抗うつ薬処方を受けた患者では、抗認知症薬の処方が有意に多かったが(p<0.001)、理学療法を受けた患者では、抗認知症薬の処方が有意に少なかった(p=0.006)。

 著者らは「健康状態が不良な患者には、抗認知症薬が処方される可能性が低かった。この結果は、治療の副作用に対して脆弱なこのような患者にとって好ましいと考えられる。同時に、抗認知症薬の処方では、健康状態が良好である患者、患者やその家族と協力して処方制限を試みる患者をターゲットとすることが推奨される」としている。

(鷹野 敦夫)