ivabradineのHFrEF患者への投与、日本人でも有用(J-SHIFT)/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2019/04/03

 

 慢性心不全では、高い心拍数が心血管系イベントの独立したリスク因子となる。既存薬による治療を行っても心拍数の高い患者において、HCN(Hyperpolarization-activated Cyclic Nucleotide-gated)チャネル阻害薬ivabradineの上乗せ投与の有用性・安全性が検証された。2019年3月29~31日に横浜で開催された、第83回日本循環器学会学術集会で、日本人HFrEF(左室駆出率が低下した心不全)患者を対象とした第III相J-SHIFT試験の結果を、九州大学大学院医学研究院循環器内科学 筒井 裕之氏が発表した。

ivabradine群で心不全悪化による入院が有意に減少

 ivabradineは、心臓の洞結節に発現するHCNチャネルを阻害することで、過分極活性化陽イオン電流(If)を抑制し、心拍数を減少させる作用機序を持つ。

 J-SHIFT試験は、日本人HFrEF患者(標準治療下にあるNYHA心機能分類II~IV、左室駆出率[LVEF]35%以下、洞調律下での安静時心拍数75回/分以上)を対象に、ivabradineの有効性と安全性を検討した第III相二重盲検無作為化並行群間比較試験。主要評価項目である「心血管死または心不全悪化による入院」のハザード比が1を下回ることの確認を目的とし、安静時心拍数、LVEF、安全性などがその他の評価項目として設定された。

 ivabradineの投与は2.5mg(1日2回)から開始し、心拍数および忍容性に応じて2.5mg、5mg、7.5mg(それぞれ1日2回)に用量調節された。

 日本人HFrEF患者を対象に、ivabradineの有効性と安全性を検討した主な結果は以下のとおり。

・全体で254例が組み入れられ、ivabradine群とプラセボ群にそれぞれ127例ずつ無作為に割り付けられた。観察期間中央値は、589日であった。
・平均年齢:61.2歳(ivabradine群) vs. 60.1歳(プラセボ群)、平均LVEF:27.9% vs. 26.6%。NYHAII/III/IVはivabradine群で78.7%/19.7%/1.6%、プラセボ群で80.3%/18.1%/1.6%であった。
・既存薬による治療歴は、ACE阻害薬:44.9% vs. 52.8%、ARB:24.4% vs. 15.7%、MRA:83.5% vs. 71.7%、β遮断薬:96.1% vs. 94.5%であった。
・心血管死または心不全悪化による入院は、ivabradine群26例(20.5%)に対しプラセボ群37例(29.1%)で、ハザード比[HR]は0.67(95%信頼区間[CI]:0.40~1.11、p=0.1179)であった。なお、心血管死については両群で差はみられず(HR:1.00、95%CI:0.36~2.79、p=0.9972)、心不全悪化による入院はivabradine群で有意に減少した(HR:0.53、95%CI:0.31~0.92、p=0.0242)。
・安静時心拍数はivabradine群で有意に減少し(-15.2 vs.-6.1回/分、p<0.0001)、LVEFは有意に増加した(11.1% vs.6.6%、p<0.0001)。
・有害事象として、軽度の光視症(6.3% vs.3.1%)、心房細動(2.4% vs.5.5%)、無症候性徐脈(両群とも0.8%)が報告されたが、症候性徐脈は認められなかった。

 なお、ivabradineは本試験および、2010年発表の国際多施設共同試験SHIFT試験の結果に基づき、2018年12月に「洞調律下での安静時心拍数が75回/分以上の慢性心不全」の効能・効果で、国内製造販売承認申請されている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)