第10回 あなたは医学論文を「読める」か?【Dr.倉原の“俺の本棚”】

  • 公開日:2018/10/12
企画・制作ケアネット

ほかのドクターがどんな本を読んでいるのか、気になりませんか?CareNet.com “おどろき”医学論文が好評の呼吸器内科医 倉原優氏が、自身の本棚から「これは!」とウナる本を毎月1冊ピックアップ。思わず読みたくなる“医書”を紹介します。

※紹介する書籍は倉原氏個人の選書です。ケアネットが推薦するものではありません。

【第10回】あなたは医学論文を「読める」か?

私は、自身のブログ「呼吸器内科医」で、読んだ呼吸器系の論文記事をほぼ毎日アップしているのですが、前向き研究から後ろ向き研究まで、症例報告からランダム化比較試験まで、あまねく医学論文を選り好みせず、がむしゃらに読んでいます。そのため、読んでいる論文量に関しては、おそらくランキング上位にいると自負しています。もちろん、私以上に読んでいる猛者を何人も知っているんですけどね。

※それってスゲェ非効率的じゃんという意見もあります。

『論文を正しく読むのはけっこう難しい:診療に活かせる解釈のキホンとピットフォール』

植田 真一郎/著. 医学書院. 2018

あなたは医学論文が「読める」か?と聞かれて、自信を持って「ハイ」と答えられる医師は少ないと思います。私も、毎日のように医学論文を読んでいますが、その解釈にはまだ自信を持てません。医学論文は、その存在自体が恣意的です。いろいろな人の思いが込められていますし、意図的に操作されてしまうこともあります。読みながら「本当にこれは正しいのだろうか」という懐疑的な目を持たなければ、真実は見抜けない。

最近流行している「複合エンドポイント」。アレって実際どうなの?と思った人は少なくないはず。これぞというエンドポイントを1つ設定すればいいのに、複合エンドポイントを使用しなければならない理由があります。頻繁に起こらない事象がエンドポイントだと、そもそも臨床研究が成立しないので、エンドポイントとして妥当そうなものを全部ブッこめ!という荒々しい戦略です。そんな複合エンドポイントに隠されたワナについても、この本は実例を挙げて詳しく記載してくれています。

著者の植田教授は、本書で実際の論文をビシバシ辛口に吟味されているので、論文のオーサーからクレームが来ないのかなと少し心配になります。有名な論文も真正面から批判されておられ、その文体からは説得力が溢れ出ています。

世の中には、英語論文を書いてアクセプトされようというコンセプトの「論文を書くための本」は結構たくさんあるんですよ。でも、「論文を読むための本」って斬新ですよね。ある程度統計のことを理解しないと、読めない内容なので、私はこれを読破するのに1週間以上かかってしまいました。

いつか、自信を持って「私は医学論文を読めます!」と言えるようになるために、この本は何度も読み返したいと思っています。良本です。本当に。

『論文を正しく読むのはけっこう難しい:診療に活かせる解釈のキホンとピットフォール』

植田 真一郎/著
出版社名
医学書院
定価
本体3,200円+税
サイズ
A5判
刊行年
2018年

倉原 優 ( くらはら ゆう ) 氏近畿中央呼吸器センター

[略歴]

2006年滋賀医大卒業。洛和会音羽病院を経て08年から現職。

自身のブログ「呼吸器内科医」では医学論文の和訳や医療エッセーを執筆。

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