EGFR-TKIで進行した日本人肺がん、遺伝子変異と治療選択の実態(REMEDY)/ELCC2018

提供元:ケアネット

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公開日:2018/04/18

 

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役社長:ステファン・ヴォックスストラム)は、4月11日~14日にスイス・ジュネーブで開催されたELCC(欧州肺癌学会)において、多施設共同前向き観察研究REMEDY試験の結果を発表した。本試験は実地臨床下でEGFR-TKI治療中に増悪を来した日本人症例における、一連の検査および薬剤選択の状況を明らかにしたもの。日本人患者のオシメルチニブへのアクセスの実態を把握する最初のリアルワールドエビデンスとしても注目される。

 REMEDY試験は国内49施設において、2017年1月~8月に、EGFR-TKI投与中に病勢増悪を認めた236例を対象に行われた前向き観察研究。

 本試験では、T790M変異検査のための検体採取率、T790M変異検査実施率、T790M変異陽性率、T790M変異ステータスごとの薬剤選択状況を前向き観察により確認した。その結果、実地臨床下では増悪部位の腫瘍検体採取が困難な場合があるなどの理由により、EGFR-TKI投与中に病勢増悪が認められた患者のうち、オシメルチニブによる治療対象となるT790M変異陽性が確認できた患者の割合は約26%にとどまることが判明した。

 REMEDY試験の研究代表者である、九州がんセンター 呼吸器腫瘍科の瀬戸貴司氏は、アストラゼネカ株式会社のプレスリリースの中で、現在T790Mの検出には組織検体や血漿検体が用いられるが、実地臨床においてこれまで、検体採取からT790M変異検査の状況とT790M変異ステータス別の治療実態を包括的に検証した報告はなく、実態は不明であった。今回、T790M変異を確認できたEGFR変異陽性NSCLC患者は全体の約4分の1との結果であったが、適切な腫瘍検体を用いて検査の精度を上げることで、より多くの患者に新たな治療機会を提供できる可能性がある、と述べている。

 主な結果は以下とおり。

・T790M変異検査のための検体採取率は86.9%(205例)、T790M検査実施率は84.3%(199例)、T790M変異陽性率は25.8%(61例)
・T790M変異陽性でオシメルチニブが使用された割合は23.7%(56例)であった。
・組織・細胞検体を用いたT790M変異検査は68例に、血漿検体を用いたT790M変異検査は137例行われ、組織・細胞検体を用いて実施したT790M変異検査の22例および血漿検体を用いたT790M変異検査の27例が陽性であった。
・初回の検査で陰性または不明と診断された一部の症例においてはT790M検査が再度ないし再再度実施され、新たに12例がT790M変異陽性と同定された。
・血漿検体を用いたT790M変異検査の主な実施理由は、腫瘍検体採取が患者に及ぼす侵襲性負担であった。

(ケアネット 細田 雅之)

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