稀少難病「表皮水疱症」を知る

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/01/27

 

 2017年1月19日、NPO法人表皮水疱症友の会DebRA Japan/公益財団法人共用品推進機構は、「稀少難病『表皮水疱症』を学ぶ~日常生活での不便さ・便利さ、もの・ことについて」と題するセミナーを開催した。
 「表皮水疱症」は10万人に1人の頻度で生まれる遺伝性の稀少難病で、日本国内の推定患者数は1,000人程度とされている。日常生活における軽微な刺激や摩擦によって安易に全身の皮膚や粘膜にびらんや水疱を生じる。指定難病に指定されているが、根治療法はない。

表皮水疱症とは
 はじめに、新熊 悟氏(北海道大学病院皮膚科)が「表皮水疱症」の疾患の概要を説明した。
 表皮水疱症は、皮膚の表皮と真皮の接着タンパクの異常で表皮と真皮が剥がれ、びらんや水疱を生じる皮膚病である。本症は、「単純型表皮水疱症」(表皮下層に裂隙)、「接合部型表皮水疱症」(表皮と真皮結合部に裂隙)、「栄養障害型表皮水疱症」(表皮直下に裂隙)の3つに大別される。原因となるタンパクの違いで、臨床症状も多岐にわたる。
 なかでも「栄養障害型表皮水疱症」は、手指の癒着、粘膜障害、水疱の傷あとが皮膚がんとなる場合もある。
 本症を取り巻く環境として、根治療法がない、専門家が少なく、診断できない医師が多い、診断検査実施可能な施設が限られている、医療以外の日常生活における支援が病院側では対処できていないことなどを挙げ、それらに対応すべく、表皮水疱症センター設立の必要性を述べ、最後に、「最終目標は新規治療法の開発である」と講演を結んだ。

患者の立場から
 続いて、本症患者の石井 真里奈氏が日常生活における不便さや病気とどう付き合っているかを語った。「常に痛み、かゆみがあり、力を入れようとすると水疱ができて皮がむけてしまうため、ペットボトルのふたを開けるのにも苦労する。たくさん不便なことはあるが、それで気に病むのではなく、前向きな気持ちを持つことが大事である」と述べた。
 最後に、NPO 法人表皮水疱症友の会 DebRA Japan代表の宮本 恵子氏が患者会の必要性について語った。
 今年で患者会設立から10年が経ち、「この病気と向き合うことで、たくさんの仲間ができた」と述べた。患者会の活動によって2010年に在宅難治性皮膚疾患処置指導管理料が認められ、在宅におけるガーゼなどの衛生材料が保険の算定対象となった。しかし、皮膚科医がいまだにこの制度を知らない場合もあり、恩恵を受けられない患者もいるという。こういった状況を踏まえ、「患者や医師、医療従事者患者などが情報を得られる拠点づくりをしていきたい」と、講演を結んだ。

(ケアネット 常盤 真央)