心房細動は心筋症の原因か、結果か?

提供元:ケアネット

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公開日:2016/10/14

 

 孤立性心房細動(AF)は隠れた心筋症を反映しており、洞調律復帰しても残存する心筋症によりAFが再発するのではないか―。この仮説を検証するため、英国・オックスフォード大学の研究グループが、左室に関与する病態を有しない孤立性AF患者において、カテーテルアブレーション後の洞調律復帰が左室の機能およびエナジェティクスに及ぼす影響を調べた。この研究では、アブレーション前後の左房および左室の容量と機能の評価にMRIを用いた。また、心筋症のマーカーとしてエネルギー代謝が有用なことから、エナジェティクスの評価にはPhosphorus-31 MRスペクトロスコピー(31P-MRS)を使用した。Circulation誌オンライン版9月14日号掲載の報告。

孤立性AFでアブレーションを受けた53例と健康成人25例を対照評価
 研究では、症候性の発作性もしくは持続性AFを有し、かつ弁膜症、コントロール不良の高血圧、冠動脈疾患、甲状腺疾患、全身性の炎症性疾患および糖尿病を有しない孤立性AFで、アブレーション治療を受けた53例を対象とした。対照群として、年齢と性別をマッチさせた洞調律の健康成人25例も組み込まれた。MRIで左室の駆出率(LVEF)、収縮期ピークにおける円周ストレイン(PSCS)、左房の容量と機能を定量的に評価した。エナジェティクスについては、31P-MRSを用いて評価した(phosphocreatineとadenosine triphosphate の比率 [PCr/ATP])。AFの頻度の評価にはアブレーション前後に行われた1週間のHolterを用い、症状を伴わないAFの再発を検知するために心電図イベントモニターが用いられた。

アブレーション前の左室機能およびエナジェティクスはAF患者で低下
 アブレーション前は、左室の機能とエナジェティクスはコントロール群に比べてAF群で有意に低下していた。(LVEF:AF群 61% [四分位範囲:52~65%] vs.コントロール群 71% [四分位範囲:69~73%]、 p<0.001、PSCS:AF群-15% [四分位範囲:-11~-18%] vs.コントロール群 -18% [四分位範囲:-17~-19%]、p=0.002、PCr/ATP:AF群 1.81±0.35 vs.コントロール群 2.05±0.29、p=0.004)。また、AF群はコントロール群に比べ、左房は拡大し、機能は低下していた。

 アブレーション後、早期(1~4日)の段階では、AFから洞調律へ復帰した患者ではLVEF、PSCSともに改善が認められたが(LVEF:+7.0±10%、p=0.005、PSCS:-3.5±4.3%、p=0.001)、アブレーション前後ともに洞調律であった患者ではLVEF、PSCSに変化が認められなかった。

 アブレーション後、6~9ヵ月の段階では、AFは有意に減少した(54%から0%、p<0.001)。しかしながら、それ以後の改善はLVEF、PSCSともに認められず、コントロール群に比較しても低いレベルのままでとどまった。同様に、心房の機能もアブレーション前と比べても改善はみられず(p=NS)、コントロール群に比べて低いままであった(p<0.001)。

 アブレーション前のPCr/ATPはコントロール群より低く、アブレーション後の洞調律への復帰(p=0.006)やAFの無再発(p=0.002)が有意であったにもかかわらず、PCr/ATPはコントロール群より低い値のままであった(p=0.57)。

 孤立性AFは、エナジェティクスが障害されると同時に左室機能も低下しており、それはアブレーション後においても改善しない。これらの知見は、AFが隠れた心筋症の結果(原因ではなく)であり、その心筋症はアブレーションによるAFの頻度の減少にもかかわらず、存在し続けることを示唆している。

(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)

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