高齢糖尿病患者の血糖値目標は3カテゴリー

提供元:ケアネット

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公開日:2016/05/25

 

 日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会である「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」は、5月20日に「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」を発表した。
 これはわが国の超高齢化社会に鑑み、高齢糖尿病患者の抱えるさまざまな問題(たとえば心身機能の個人差、重症低血糖を来しやすいなど)に対応するために昨年「高齢者糖尿病の治療向上のための日本糖尿病学会と日本老年医学会の合同委員会」が設置され、「高齢者糖尿病診療ガイドライン」の策定を目指す過程で、今回発表されたものである。
 「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標」は、次の3つの基本的な考え方で構成されている。
(1)血糖コントロール目標は患者の特徴や健康状態:年齢、認知機能、身体機能(基本的ADLや手段的ADL)、併発疾患、重症低血糖のリスク、余命などを考慮して個別に設定すること。
(2) 重症低血糖が危惧される場合は、目標下限値を設定し、より安全な治療を行うこと。
(3)高齢者ではこれらの目標値や目標下限値を参考にしながらも、患者中心の個別性を重視した治療を行う観点から、表(別表省略)に示す目標値を下回る設定や上回る設定を柔軟に行うことを可能としたこと。
 高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)では、まず患者の特徴・健康状態に応じて大きく3つのカテゴリーに分類、その中でも重症低血糖が危惧される薬剤(例:インスリン、SU薬、グリニド薬など)の使用の有無で2つに分類(カテゴリーIでは年齢でも2つに分類)して血糖コントロールの目標値を定めている。

高齢者糖尿病の血糖コントロール目標(HbA1c値)
・カテゴリーI(認知機能正常かつADL自立)
 薬剤使用なし→ 7.0%未満  
 薬剤使用あり:
 65歳以上75歳未満→ 7.5%未満(下限6.5%)
 75歳以上→ 8.0%未満(下限7.0%)

・カテゴリーII(軽度認知障害~軽度認知症または手段的ADL低下、基本的ADL自立)
 薬剤使用なし→ 7.0%未満  
 薬剤使用あり→ 8.0%未満(下限7.0%)

・カテゴリーIII(中等度以上の認知症または基本的ADL低下または多くの併存疾患や機能障害)
 薬剤使用なし→ 8.0%未満  
 薬剤使用あり→ 8.5%未満(下限7.5%)
 
 治療目標は、年齢、罹病期間、低血糖の危険性、サポート体制などに加え、高齢者では認知機能や基本的ADL、手段的ADL、併存疾患なども考慮して個別に設定する。ただし、加齢に伴って重症低血糖の危険性が高くなることに十分注意する。

 なお、注記して認知機能や基本的ADLなどの評価では、 日本老年医学会ホームページを参照するほか、合併症予防のための目標値を7.0%未満としつつも、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法の副作用なく達成可能な場合の目標を6.0%未満、治療の強化が難しい場合の目標を8.0%未満とするなどの内容が定められている。そのほか、患者の状態に応じ、重症低血糖を予防する対策を講じつつ、患者個別に目標や下限を設定してもよいことやグリニド薬の注釈なども記載されている。
 「重要な注意事項」として、糖尿病治療薬の使用では、日本老年医学会編「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を参照とすること、薬剤使用時には多剤併用を避け、副作用の出現に十分に注意することが謳われている。

詳しくは、日本糖尿病学会「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」まで。

(ケアネット)