生存曲線の比較、ハザード比でよいのか

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/29

 

 がん領域の臨床試験で生存曲線の差を評価するとき、ハザード比(HR)がよく使用される。しかし、HRによる評価では治療効果の不正確な評価につながる恐れがある。そこで、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のLudovic Trinquart氏らは、がん領域の無作為化比較試験における治療効果の評価におけるHRと生存曲線下面積(RMST)の差(および比)について比較した。その結果、概して、HRがRMST比よりも治療効果推定値が有意に大きかった。著者らは、絶対的効果が小さい場合にはHRが大きくなる可能性があり、イベント発生までの期間のアウトカムを評価する無作為化試験では、RMSTによる評価をルーチンに報告すべきと結論している。Journal of clinical oncology誌オンライン版2月16日号に掲載。

 著者らは、2014年の後半6ヵ月間における主要5誌から、がん領域の無作為化比較試験を選択し、各試験のイベント発生までの期間のアウトカムに関して、個々の患者データを再構築した。それぞれの試験を再分析し、HRにより推定された治療効果をRMSTの差(および比)により推定された治療効果と比較した。さらに、RMST比に対するHRの平均比率を推定した(平均比率が1未満ならば、HRによる評価のほうが楽観的なことを示す)。

 主な結果は以下のとおり。

・合計54のランダム化比較試験、3万3,212例の患者を解析した。
・21試験(39%)において、全生存がアウトカムに選択されていた。
・非比例ハザード性のエビデンスが13試験(24%)で認められた
・HRとRMSTベースの評価は、1つのケース以外は、効果の統計的有意性について一致した。
・HRの中央値は0.84(Q1~Q3の範囲:0.67~0.97)、RMST差の中央値は1.12ヵ月(範囲:0.22~2.75ヵ月)であった。
・RMST比に対するHRの平均比率は1.11(95%CI:1.07~1.15)で、試験間のばらつきは大きかった(I2=86%)。
・アウトカムの違い(全生存と他のアウトカム)や比例ハザード性の成立・不成立にかかわらず、結果は一致していた。

(ケアネット 金沢 浩子)